この現象は、太陽系がある天の川銀河(銀河系)を周回する2つの矮小(わいしょう)銀河の1つ、大マゼラン雲で起きている。この恒星系「MACHO 80.7443.1718」は、地球から約16万9000光年の距離にある。
ハートビート星
この連星系の主星は太陽の35倍の質量を持つ恒星で、伴星はそれよりはるかに小さい。2つは楕円形の極めて接近した軌道を描き、互いの周りを公転している。このような恒星は「ハートビート(Heartbeat、鼓動)星」と呼ばれる。心臓の鼓動のリズムのように、周期的に明るさが変化するからだ。研究チームは10日の科学誌『Nature Astronomy』で発表した論文で、公転運動する主星と伴星が最接近してすれ違うたびに、互いの重力により、地球と月の間で働くような潮汐作用が起こることを明らかにした。この潮汐作用によって巨大な波が発生し、主星である大型星の一部が大きく突出するように変形するようだ。
これは「ハートビート星」に通常見られる現象だが、今回の場合は明るさの変動が著しく、予測されるよりも約200倍大きい。伴星が主星に接近すると、主星に潮汐波が発生して大きく盛り上がった後、主星の表面に激しく打ち付けているのだ。
論文の筆頭執筆者で、米ハーバード・スミソニアン天体物理センター博士研究員(理論天体物理学)のモーガン・マクロードは「主星の高く盛り上がった潮汐波が打ち砕けるたびに、地球全体を数百回も繰り返し破壊できるほどのエネルギーが放出される」と説明する。「これほど激しく変動するハートビート星は他に知られていない」
砕ける波
約30日周期で起こるこの現象が発生時に観測されるのは幸運と言えるが、マクロードはコンピュータモデルを作成し、何が起きているかを厳密に解明することにした。その結果、2つの星の重力の相互作用で主星に発生する潮汐波は、主星の半径の約5分の1(約430万km)の高さに達することが判明した。さらに、波が砕けると同時に、地球の海洋で起こるのと同じように、物質が外側に投げ出されることがわかった。これほど極端な現象が観測されたのは初めてだが、これが最後になることはないだろう。「砕ける波によってはじき飛ばされ、光を放つ恒星大気を探して、より多くの極端なハートビート星を探査する計画をすでに進めている」と、マクロードは語っている。現在知られているハートビート星は約1000個、うち約20個が明るさを激しく変動させる。
(forbes.com 原文)