陸は、海外展開を2023年の重点取組み事項と位置付けている。3月には、インドのフードデリバリー企業である「Zomato」と「Kotak Mahindra Prime」と提携し、電動スクーターを利用するフードデリバリー配達員向けに有利な条件での融資を開始した。また、5月には韓国のバイクレンタル企業バイク・バンク(Bike Bank)との提携を拡大し、それまで首都ソウルのみに展開していたバッテリー交換ネットワークを他の7都市にも拡大した。
現在、Gogoroは9つの市場で事業を展開している。2021年にインドとインドネシアに、昨年にはシンガポールとイスラエル、フィリピンに参入した。新市場に進出する際には各国の業界リーダーと提携しており、シンガポールではジャーディン・マセソン傘下のジャーディン・サイクル・アンド・キャリッジ、イスラエルではメトロモーターとPazグループ、フィリピンではビリオネアのハイメ・ゾベル・デアヤラが率いるアヤラ・グループと協業している。
香港生まれ、米国育ちの陸は2011年、台湾でGogoroを設立した。台湾は以前からハイテク産業が栄え、豊富な人材と強固なサプライチェーンを強みとしており、陸いわく「イノベーターにとっての天国」だという。
元々は工業デザインと家具デザインの業界出身で、ナイキでキャリアをスタートさせ、ブランドデザインとイメージデザインを担当。その後はマイクロソフトでXboxとウィンドウズXPのデザインに携わった後、スマートフォンメーカーHTCのチーフ・イノベーション・オフィサーに就任した。それらの仕事を通じて、テクノロジーの力で持続可能な成長をサポートしていくことを学んだという。2000人を超える従業員を抱えるGogoroは、バッテリーセルを除くほとんどの製品を台湾で設計・製造している。
Gogoroの出資者には、シンガポールの政府系ファンドのテマセクや、アル・ゴア元米副大統領が設立したGeneration Investment Management、台湾のコングロマリットRUENTEX(潤泰)グループの会長でビリオネアの尹衍樑(Samuel Yin)の息子、尹崇堯(Yin Chung-yao)が含まれる。