しかし、ロシアも今や、ベラルーシへの戦術核兵器の配備を宣言するなど、自らNPTの破壊者に成り下がっている。ロシアが北朝鮮への軍事協力を拒む理由は、今やどこにもない。でも、中国にしてみれば、北朝鮮がロシアに弾薬支援をする程度ならまだしも、核・ミサイル開発にまで協力が広がれば黙ってはいられない。米国の東アジアに向けた陸上発射型中距離ミサイルの配備を加速させるなど、中国の安全保障に重大な影響が出るからだ。
北朝鮮は、「ロシアさんとそんなに付き合うなというなら、中国さんにもっと支援していただかないと」という展開を目論んでいるのかもしれない。
そして、北朝鮮はロシアと中国という安保理常任理事国を競わせて支援を引き出しながら、国際社会から1カ国でも多くの支持を引き出そうとしている。北朝鮮は金日成時代、韓国との間で国連加盟を競った。国連加盟国の支持を得るため、アフリカや東南アジアなどになけなしの資金をはたいて支援を続け、様々な関係を作った。
別の元幹部によれば、平壌は最近、アフリカ駐在の北朝鮮大使らに、「任国の支持を得るため、医療や軍事など、少ない資金でも協力できる分野を探して接近しろ」という指示を出したという。元幹部は「米国が北朝鮮と交渉する気がないなら、権威主義陣営にグローバルサウスなどの第3陣営も加えて、米国を逆包囲する作戦なのだろう」と語る。
崔善姫外相はニューヨークで米韓両国を無視し、返す刀で中国やロシア、アジア・アフリカ諸国などとほほ笑み外交をする算段なのかもしれない。唯一、日本に対しては、日朝協議が水面下で進む兆しをみせるなか、むげにあしらったりはしないだろう。そのとき、林芳正外相がどのような対応を取るのかも注目される。
過去記事はこちら>>