ロシアは先月、ウクライナ産穀物の黒海経由の輸出を保障する合意から離脱。ウクライナの港への船舶の航行を阻止する構えを見せていた。だがここにきて、これがロシアの虚勢だったとの見方が出ている。
米シンクタンクの戦争研究所は「3隻の民間船が妨害を受けることなくウクライナへと航行したとの報告は、ロシアが現時点で航行を妨害する気がないか、妨害できないことを示唆している可能性がある」と指摘した。
3隻は、ドナウ川を挟んでルーマニアと接するイズマイール港に入稿。北大西洋条約機構(NATO)の複数の航空機が、その様子を注意深く監視した。船舶はイズマイール港で穀物を積んだ後、再び黒海に出て外国の港に向かうと思われる。
イスラエル籍とギリシャ籍の船舶はボスポラス海峡から北に、トルコ・グルジア籍の船舶はトルコ北部から西に航行した。
上空では、少なくとも4機のNATO軍機がパトロールしていた。米海軍の哨戒機P-8、表面スキャンレーダーを搭載する米陸軍の電子偵察機チャレンジャー、米空軍の無人偵察機RQ-4、そしてNATOの早期警戒管制機E-3だ。いずれも常に武器を搭載しているわけではないが、付近のルーマニア領内にはイタリアのユーロファイターやルーマニアのF-16などのNATO戦闘機がいた。
3隻はいずれも、行先を隠そうとはしていなかった。無線応答装置のスイッチを入れ、インターネットや船舶追跡サイトにアクセスできる人なら誰でも位置と針路がわかるようにした。
ロシア海軍の黒海艦隊は、同国の穀物合意離脱を受け、ウクライナに向かう船舶の航行は阻止するとし、攻撃も辞さないと警告していた。1年5カ月前のウクライナ侵攻開始以来、黒海を離れていない同艦隊は、これまでにウクライナ軍のミサイル攻撃で数隻を失っている。