同研究によると、強制労働によって生産され米国で販売されたすべての食品(海産物を除く)のうち、62%が米国内で生産された可能性が高いという。
強制労働のリスクが最も高いカテゴリーは、動物性タンパク質、果物や野菜の加工品のほか、天然甘味料、コーヒー、ワイン、ビールなどの嗜好品で、これらはすべて、手摘みされるか、人手による加工を必要とする食品だ。
米国人が口にする食品が強制労働によって生産されている場合、それは、米国に食品を輸出している他国よりも、米国内で行われていることの方が多いと、論文を執筆した研究チームは述べている。
研究チームは、強制労働は主に他国で行われると思い込んでいる人が多いため、実際には米国内で強制労働が行われていても見落とされがちだと考えている。
さらに研究チームは、強制労働を防ぐためには輸入禁止措置や貿易制裁が効果的だと考えられているが、こうした施策は、輸入品や米国外の供給源を対象にしたものだと指摘している。
米国で食料生産に従事する労働者の多くが、貧困や言葉の壁、不安定な在留資格により、強制労働の危険にさらされていると研究チームは述べている。例えば、季節農業労働者用のビザで入国する移民労働者は、特定の雇用主に縛られるため、虐待を受けたり賃金を差し引かれたりしても、職を離れることが難しい。
今回の研究では、強制労働の定義について、国際労働機関(ILO)の指針に従っている。つまり「暴力や脅迫を使って、あるいは、累積債務や身分証明書の取り上げ、出入国管理当局への通報の脅しといった、より巧妙な手段によって、労働を強いられる状況」というものだ。
国際労働機関(ILO)の推計では、全世界で強制労働に従事させられている人の数は、2021年時点で約2800万人に上る。ただし、米国務省の人身売買に関する報告書によると、米国における強制労働のデータは信頼できない可能性が高いという。
このような研究が発表される一方で、米国における農業労働者の置かれた厳しい実態が次々と明るみになっている。7月には米紙マイアミ・ヘラルドが、エフライン・ロペス・ガルシアという29歳の農業労働者が、フロリダ州南部の農場で作業中に熱中症と見られる症状で死亡し、酷暑で死亡したと見られる労働者は今年2人目だと報じている。
米労働省によると、2月には100人以上の移民の子どもたちが、ウィスコンシン州の食肉加工工場で危険な違法労働に従事していたことが明らかになった。さらに同月、米紙ニューヨーク・タイムズの調査報道により、このような問題は米国各地で、農業以外の産業でも起こっていることが明らかになった。米政府当局が所在を把握できなくなっていた数千人にのぼる移民の子どもたちが、児童労働法に反して、食肉処理場での夜勤、屋根の葺き替え、工場での機械操作といった危険な仕事に従事していたという。
(forbes.com 原文)