2023.07.29 16:00

熱波続く欧州、理想のバカンス先が英国と北部諸国にシフト

遠藤宗生
この状況は、欧州北部の国々にとって有利に働くように思えるかもしれない。だが、このような観光客の大量流入は、深刻な問題を引き起こす恐れがある。まず、インフラは対応できるのか、ホテルの部屋や列車・航空機の座席は足りるのか。また、設備を増設する場合は、環境に配慮する必要がある。英国の下水道は何百年も前に建設されたものだし、線路は老朽化しているため、今や気温27度以上では列車を運行できない。

英国のワインは気候変動のおかげで味が年々着実に向上しており、より多くの観光客を誘致する資源となるだろう。しかし、気温の上昇は同時に、西ナイルウイルスを媒介する蚊の北上や、火災・干ばつの脅威の増加など、観光客が気を付けなくてはならない新たな健康問題を生むだろう。それに、英国にはエアコンが標準装備されていない建物が多い。

南欧で観光客に影響を及ぼしている現在の問題は、産業革命前の平均気温を1.2度も上回る温暖化に伴って引き起こされていることも、指摘しておくべきだろう。気温がもう少し上昇したら、どのような影響が出るか想像してみてほしい。

国際的な気候変動対策の枠組み「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を産業革命前比で2度未満に抑えることを目標としている。気温が上昇を続ければ、観光産業がさらなる問題に直面することになるのは間違いない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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