アシスタントの彼女は23歳、上司は30歳。ランチに誘われた時は嬉しかった。でも、レストランにバイクで行くなんて思ってもみなかった。しかも、腕を上司の腰に巻きつけて。テーブルにつくやいなや、上司は彼女がいかに魅力的であるかを語り、今度はディナーに付き合ってくれと誘った。新しいプロジェクトについての話など話題にものぼらなかった。
「こうしたケースでは、上司の誘いに乗っても乗らなくても面倒なことになるでしょう」と、求人情報サイトVault.comの元副社長ヴィッキー・リンは話す。上司の誘いを断ったら、彼の心を傷つけ仕事上の関係もぎくしゃくする。とはいえ彼女に誘いに乗る気はない。
恋人がいると告げることで、彼女はなんとか上司の面目をつぶさずに事をすませた。上司もあきらめてくれた。しかし、いつもこんなにうまくいくとは限らない。
「こういうことを仕掛けてくる男性は、嘘をつくことが多いんです」と、30年間にわたって労働問題を手掛けてきた弁護士のアン・ゴールデンは語る。やめてくださいと言えるだけの勇気を若い社員はなかなか持てない。言えたとしても、上司はこうつぶやくだろう。「なにを勘違いしているんだ。仲良くやろうとしただけじゃないか」
内心では喜んでいるのに、彼女はわざと気のないふりをしているだけだと解釈する場合もある。「そうなったら人事部に駆け込むしかない」とゴールデンは言う。「ただしキャリアに傷がつくことは、お互い覚悟しなくてはなりませんが」。
「上司の性格をよく見極めて、率直に話し合う余地はないかを探ることが大切です」と弁護士のエドワード・ハーンスタットは言う。「上司が本当にあなたを口説こうとしているのか、それとも単にだらしないだけなのかを見極める必要があります。もし上司が聞く耳を持っていそうなら、話し合いで解決する方向にもっていくのが賢明でしょう」
経営サイドに立って労働問題を手掛けるダニエル・オメーラ弁護士は、上司のけしからん振る舞いにユーモアで対抗することを勧めている。「ねえ、誰か人事部への短縮ダイヤル知らない?」とか、「奥さんに言いつけるから、ケータイ貸してください」といった具合にかわすのだ。ただし、あくまで冗談めかして言うことを忘れないこと。若い新人が男性上司に立ち向かうのは、おそろしく骨の折れることなのだ。
1.誤解を招くようなことはしない
事態を未然に防ぐには、自分が真剣に仕事に取り組みたいと思っており、ロマンスを探しに職場に来ているわけではないことを服装や態度で示すこと。
2.あくまで仕事上の付き合いに止めたいことを上司に伝える
率直に、ただし相手を尊重することを忘れずに。こんなセリフがいいかもしれない。「もし勘違いさせてしまったのなら申し訳ありません。でも、私は仕事上でいいお付き合いをしたいと思っているんです」
3.記録を残す
もし上司からのアプローチが止まないようなら、いつ、どんなことをされたのかを詳細に記録につけておく。
4.弁護士に相談する
訴訟までもっていかないにしても、法律が自分をどう守ってくれるのかを知ることができるだろう。
5.人事部に訴える
いろいろやっても上司を振り払えず疲れ果てたら、人事部に相談する。ただし、人事部はあくまで会社のために仕事をしているのであって、あなたのために骨を折ってくれるわけではないことを心に留めておくこと。
6.訴訟を起こす
これは最後の手段だ。80〜90%が和解にもちこまれると、労働問題に詳しい弁護士は語る。