フェア開催の背景にはどんな問題意識があったのか。同イベントでアソシエイトディレクターを務めた倉沢琴、アソシエイトディレクターとギャラリーリレーションズを担当した黒瀧紀代士、会場設計を手がけた建築コレクティブGROUPの井上岳3人に聞いた。
倉沢:EASTEAST_(以下、EE)は次世代を担うアートプレイヤーたち(アーティスト、キュレーター、鑑賞者、パトロン、企業など)が連携し市場経済と文化・アートが公平に作用し合う「文化的エコシステム」の創造を目指すアートプラットフォームです。SNSの到来により人々の交流がたこつぼ的に閉じ、「外のコミュニティ」とのつながりが希薄化しているのではないかという問題意識があり発足しました。EE_2023はそうした課題を共有したうえで、異なるアート観や思想をもつギャラリーをひとまず一カ所に集めてみようという試みでした。
黒瀧:歌舞伎町にある「デカメロン」というアートスペースのディレクターを務めているのですが、私見としてアーティストランスペースやプロジェクトスペース、アーティストコレクティブという形態での活動をよく見聞きするなという印象をEE_に反映することを目的としていました。もちろん、それらは過去にも存在していましたが、なぜ継承されることなく潰えるのかをアートイベントという枠組みを介して参加者とともに考えることがEE_として重要ではないかなと思ったからです。
井上:僕がいるGROUPは建築コレクティブとして活動しています。というのも、複数人で話し合いながら設計したいんです。これまでひとりのスター建築家の名の下に投資が集まり、トップダウン型で設計される事例が多かったと思いますが、コレクティブ形式だとそれとは違う方法論で建築にアプローチできる。GROUPは映画監督など他分野の方とも、よく協働してプロジェクトを進めています。EE_2023では、普段音楽ライブの照明や音響をされている方々と一緒にひとつの空間をかたちにしていけたのがいい経験でした。
倉沢:制作チームには異ジャンルの人たちが大集結していましたよね。ファッションショーの設営をしている方とか、音楽フェスの運営をしている方とか。
黒瀧:EE_2023のいちばんの成果は、同年代の顔合わせができたことだと思います。SNSや人づてで一方的に情報だけが入ってくると、考え方が相いれないとか同族嫌悪からくる毛嫌いも起こりがち。でも、実際に会ってみたら意外と馬が合うってことも結構あるはずで。そういう対面での交流が、後々になってエコシステムの醸成に生きてくる気がします。
倉沢 琴◎1994年、大阪府生まれ。クリエイティブオフィスSANAのメンバー。主なプロジェクトにPARCO PRIDE WEEK「あいとあいまい」など。EASTEAST_ではコミュニケーション統括・アソシエイトディレクターを担当。
黒瀧紀代士◎1986年、東京都生まれ。アーティスト、新宿・歌舞伎町プロジェクトスペース「デカメロン」キュレーター、ディレクター。EASTEAST_ではアソシエイトディレクターとギャラリーリレーションズを担当した。
井上 岳◎建築家。GROUP共同主宰。主な作品に「新宿ホワイトハウスの庭の改修」「海老名芸術高速」など。主な編著に『ノーツ 第一号「庭」』など。EASTEAST_ではGROUPとして会場設計にかかわる。