地球の軌道上には役割を終えた人工衛星やロケットの破片など、無数のゴミ「宇宙デブリ」が漂っている。これ以上デブリが増えては人工衛星や宇宙ステーションの運用に支障が出てしまうということで、NASAやJAXAをはじめ、世界の企業や団体が宇宙デブリ対策の研究を進めている。そのなかで有力候補とされている技術に、BULLも採用している「導電性テザー」がある。
これは、デブリ処理を行う衛星とデブリを長い導電性ケーブルで結び、ケーブルに電流を流しながら飛行することで地磁気とケーブルとの間にローレンツ力を発生させ、デブリの軌道を変えて大気圏に再突入させるという方法だ。ロケットエンジンでデブリの軌道を変える方式に比べて、燃料もエンジンもいらないため小型軽量、安価にできる利点がある。
ALEが考案しBULLが開発を引き継いだシステムは、この導電性テザー装置をロケットに搭載するというもの。衛星を放出して役目を終えた後、ロケットは自ら軌道を変えて大気圏に再突入して燃えつきる。いわば自律式「デブリ拡散防止装置」だ。しかも、デブリが大気圏に再突入するまでの数カ月間を利用して、軌道上で微小重力実験などが行える非回収の軌道上小型試験装置「Micro-ISS」をセットでロケットに積み、試験サービスを提供するというオマケ付き。
BULLは、「デブリ対策装置による一定の市場確保に加え、製薬、美容、食品など、宇宙だけにとどまらない産業に対してMicro-ISSによる試験機会の提供を行うことで、販売力の強化を図る」と話している。デブリ対策をしたいロケット打ち上げ業者と、宇宙で実験をしたいコンシューマーの双方をターゲットとしたビジネスモデルが確立できれば、同社が目指す「新たな時代の宇宙開発におけるSDGs」の実現も早まるだろう。
プレスリリース