起業家

2023.07.06 09:30

「コンプライアンス」のユニコーンVantaを生んだ女性起業家

Vantaの共同創業者でCEOのクリスティーナ・カシオッポ(Getty Images)

今から約5年前、企業のセキュリティとコンプライアンス対応を自動化するスタートアップ「Vanta(ヴァンタ)」の共同創業者でCEOのクリスティーナ・カシオッポ(Christina Cacioppo)は、顧客の1人から「何かがおかしい」というメッセージを受け取った。その顧客が毎朝受け取るメールに間違った会社名が書かれていたのだ。カシオッポは即座に「バグです。申し訳ありません。修正します」と返信した。

しかし、その顧客が気づかなかったのは、その「自動送信」というメールが、実はカシオッポ自身がが作成したものだったことだった。数カ月前に会社を設立したばかりのカシオッポは、毎日午前5時45分に起きて、それぞれの顧客のアカウントの過去24時間の動きを説明するメールを手作業で作成していた。彼女は、メールを自動化するコードを書く前に、顧客のニーズを把握しようとしていたのだ。

オハイオ州出身の彼女は、会社を立ち上げてから約2年の間、スタートアップ精神あふれるアプローチで会社を運営した。Vantaは、その努力の甲斐あって質問サイトのQuoraや図面作成 (CAD)ソフトのAutodesk、決済ソフトのModern Treasuryなどの新規顧客を四半期ごとに約600社獲得し、今では推定5000社に利用されている。



サンフランシスコに拠点を置くVantaの企業価値は、2022年6月のシリーズBラウンドでクラフト・ベンチャーズやセコイアキャピタルから1億1000万ドルを調達した際に16億ドルに上昇した。同社は、これまで累計2億300万ドルを調達している。フォーブスは、現在36歳のカシオッポを「米国で最も裕福な叩き上げの女性(America’s Richest Self-Made Women)」リストに掲載し、保有資産を3億8500万ドル(約555億円)と推定している。

「Vantaのサービスが立ち上がる前、企業のセキュリティとコンプライアンス対応は、ほぼすべてエクセルのスプレッドシートで行われていました。当社が構築したのは、そうした作業を自動化するソリューションです」とカシオッポは語る。

Vantaは、継続的なモニタリングと「トラスト・レポート」と呼ばれるリアルタイムのレポートによって、このプロセスを自動化する。そして、審査を受けた専門家のネットワークを用いてデータを精査し、SOC 2、ISO 27001、HIPAA、GDPR、USDPなどの、さまざまな規格の認証を企業に与えている。
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編集=上田裕資

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