経営・戦略

2023.07.14 08:30

「社食がある企業」は強い? あるなしで労働生産性は変わるのか

結論として──

今回の調査では、以下のようなことが明らかになった。

・プライム企業の約1/3が社員食堂を設置している。

・大企業で設置されていることが多く、業界別では不動産・公益事業・通信の5割弱が社食を提供している。

・当然、社食の設置は福利厚生の充実に関する満足度に直結している。また、報酬への満足度との相関性や企業カルチャーの満足度との相関性も高い。ただし、社食の設置のみが従業員満足度を上げるファクターにはならない。

・社食を設置すれば、必ずしも業績、または生産性を押し上げるということではない。ただし、金融・情報技術・コミュニケーションサービス等、高度なスキルを持った人材が必要なセクターでは社食を設置している企業と、していない企業のROEの差が最も高い。

この3セクターの特性としては、「人的資本の重要度が高く、高度なスキルを持つ労働力を引きつけ保持し、開発することで、競争力に繋がる」という点が挙げられるだろう。
 

 今回の調査の基本条件

前後するがここで、われわれの調査の基本条件について解説しておく。

1. 仮説の設定について

われわれは調査にあたって、以下の仮説を設定した。

・社食(広義的な意味、カフェテリアプラン、食事補助なども含む)を設置している企業と設置していない企業では、それぞれ異なる特徴を持つ。

・具体的に、企業規模、従業員満足度、ガバナンス、報酬・人件費および生産性の面において異なる。

2. 調査のスコープについて

調査は以下のスコープで行った。

・東証プライム上場企業1836社、2022年(一部は2021年)の約3.6万データポイントを分析。

・社食の設置有無の特定にあたって、各社の開示資料(統合報告書など)、ニュース、記事、社食関連アワード・大賞・表彰など、複数の情報ソースから社食を設置している会社を特定。

・ニュース・記事は主に2018年から2023年までのものを参照。各アワード・大賞・表彰はテーマが幅広いため、具体的には社食だけでなく、食育活動、栄養、健康づくりなども含まれる。
次ページ > 社食の設置有無における企業の特徴

サステナブル・ラボ (編集=石井節子)

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