インタビューに答えていただいたのはソープラスの商品戦略を担当する土橋陽子氏、Xperiaを担当する小川泰造氏と小守谷樹理氏だ。
SORPLASを担当するソニー株式会社の土橋陽子氏(左)、小守谷樹理氏(中央)、小川泰造氏(右)にインタビューした
ソニー「秘伝のタレ」を使った再生プラスチック
ソープラスは1995年にソニー株式会社中央研究所が着手した、ソニーの事業所で排出される廃材・廃液を有効活用する技術開の成果として生まれたソニー独自の再生プラスチック素材だ。2010年からソニー製品での採用が始まり、最初はソニーの液晶テレビ「ブラビア」の前面枠に採用された。2018年からはソニーグループの半導体メーカーであるソニーセミコンダクタソリューションズも加わるかたちで材料開発が進んでいる。ソニーがソープラスを開発する主な目的は2つある。1つは製品に使うための高品位な素材をつくることだ。そしてもう1つは、ソニーの「環境負荷ゼロ」を目指すプロジェクト「Road to Zero」のもとで、製品に使う素材自体から環境負荷を最小限にまで抑えるためだ。
エレクトロニクスメーカーとして環境に配慮したものづくりを持続するために、プラスチック素材を使うことによる環境負担を可能な限り削減する取り組みにソニーは注力している。「その中でソープラスが果たす役割が少なくないことから、ソニーは素材の誕生以降から自社の製品に採用を広げてきた」と土橋氏が振り返る。
ソープラスの「原材料」は市場から回収された使用済みの水ボトルや、工場や事業所から排出された廃ディスク、クルマのヘッドライトなどのリサイクルされたポリカーボネート樹脂(プラスチック)だ。そこにソニーが独自に開発した硫黄系難燃剤がいわば「秘伝のタレ」として重要な役目を果たす。ソニーグループのソニー・ミュージックソリューションズではCDやDVD、ブルーレイなど光ディスクを製造している。その中から不要になった廃ディスクもソープラスの製造に役立てる、循環型リサイクルシステムをソニーグループの中で構築してきた。
右側がソープラスの原材料サンプル。左は青色に着色した同じソープラス
スマートフォンのXperiaに採用された理由
再生プラスチックであるソープラスは「丈夫で信頼性が高く、同じ用途の難燃性バージンプラスチックと変わらない品質を備えている」のだと、Xperiaの設計に携わる小川氏が素材の特徴を説明する。ソープラスには製品などの使用する箇所によって使い分けられるように、レシピが異なる複数のバリエーションがある。例えば強度が求められる部位には、ガラスを混ぜて耐久性を高めたソープラスが最適とされる。