テクノロジー

2023.06.19 11:15

ソニー、独自開発した再生プラをXperiaやテレビに積極採用する理由

内部や外装の一部パーツにソープラスを採用したXperia 10 V(左)。中央は筐体をソープラスで制作した「Style Case with Stand。右のイヤホン「WF-C700N」と色彩を合わせ込んでいる

また、一般の再生材料はジャンク材料も含めてさまざまな素材を原料に使うため、性能や色合いなどに「バラつき」が生じやすい。ソープラスに関してはソニーの社内だけではなく、社外で回収された原料も利用しているが、原料に関しては継続的に環境貢献できる状況を整えながら、高い品質のものを優先的に調達するサプライチェーンを構えた。小川氏によると「基本的には素性が明らかになっているパートナーとのみ提携することで、素材の品質を安定させている」という。
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一般的にエレクトロニクス製品の再生プラスチック使用率は30%程度に止まると言われているが、ソープラスは安定したパフォーマンスを保ちながら再生材使用率を最大99%にまで高めている。

昨今はソープラスが多くの製品に採用されるようになり、スケールメリットも拡大してきた。そのためリサイクル素材に置き換えることによるコスト負担が商品の価格に添加されることはないと小川氏は言い切った。

ソーラスは工場や市場から回収[4]した材料を破砕[1]、ペレット化[2]して新しくつくる製品に導入[4]するサイクルを実現ソーラスは工場や市場から回収[4]した材料を破砕[1]、ペレット化[2]して新しくつくる製品に導入[4]するサイクルを実現

ソニー以外のメーカーにもソープラスの採用が広がる

ソニーはソープラスを商品化して2014年から外販している。パートナーによる主な採用事例として公表されている中には、レノボの一部PCの筐体、サムソナイトのスーツケースなど耐久性能を重視するプロダクトがある。ソープラスは成形加工、着色の自由度が高い素材であることから、今後もさまざまな商品や部品として採用される可能性がある。
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ソニーグループでは今年、中国で開催した自社の展示会「Sony Expo 2023」のほか、2022年にはIT技術とエレクトロニクスの国際展示会「CEATEC」にソープラスを出展した。土橋氏によると「海外からもソープラスに多くの関心が寄せられている」という。筆者が知る限りでは環境に配慮したものづくりを徹底するため、再生素材を自社で開発するエレクトロニクスメーカーは多くない。日本発の「プラスチックに置き換えられる、エコで高品位な再生プラスチック」として、ソニーのソープラスが世界中に大きなインパクトをもたらすことを期待したい。

ソニーはソープラスのロゴを制作。自社・他社製品のパッケージなどに貼り、高品質な再生プラスチックを採用する付加価値をアピールできる仕組みをつくっている

ソニーはソープラスのロゴを制作。自社・他社製品のパッケージなどに貼り、高品質な再生プラスチックを採用する付加価値をアピールできる仕組みをつくっている


ソープラスは経年劣化が少ない素材であることから、ユーザーが使い終わった製品から素材を回収して次のものづくりに活かすような循環型のビジネスモデルもいま検討段階に入っているという。「例えばソニーのテレビに採用する部品については、ソープラスであることがわかるように刻印を付けることも考えている。今後の実現に向けて回収方法の検討を進めたい」と土橋氏が展望を語った。今後の展開が楽しみだ。

連載:デジタル・トレンド・ハンズオン
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編集=安井克至

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