政治

2023.06.14 09:30

反攻での損失続くウクライナ、戦車などの大幅な追加供与訴え

ウクライナで行われたレオパルト2戦車の訓練(Serhii Mykhalchuk/Global Images Ukraine via Getty Images)

ウクライナで行われたレオパルト2戦車の訓練(Serhii Mykhalchuk/Global Images Ukraine via Getty Images)

ロシア軍に対する反転攻勢の開始から9日が経過する中、ウクライナ軍は、同盟諸国により供与を約束されたレオパルト2戦車85両のうち少なくとも4両を失ったが、さらなる損失を予期していることは明らかだ。
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アンドリー・メルニク外務次官はドイツのテレビ局NTVに対し、独政府がウクライナへの供与を表明しているレオパルト2の数を現在の18両から3倍の54両に増やすべきだとし、「ウクライナ軍は、さらに多くの欧米製の戦車、歩兵戦闘車などの装甲車を緊急に必要としている」と語った。

5日、南部ザポリージャ州と東部ドネツク州の少なくとも3方面から攻撃を開始したウクライナ軍は、それ以降、戦車や歩兵戦闘車、工兵車を失い続けている。損失ペースは専門家にとっては想定の範囲内だが、それ以外の人々を驚かせている。

マラトクマチカ南郊にあるロシアの地雷原突破を試みた8日の攻勢は、特に大きな損失を生んだ。第33機械化旅団と第47強襲旅団はこの際、13両中4両のレオパルト2A6、109両中16両のM2ブラッドレー歩兵戦闘車、6両中3両のレオパルト2R工兵車を瞬く間に失ったとされる。
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こうした欧米製車両は爆発によって使用不能となったが、その優れた耐久性により、乗員らはおおむね無事だった。だがそれでも、両旅団の戦闘力は大幅に低下した可能性がある。両旅団は、マラトクマチカから南に約30キロ離れた要衝トクマクにかけた攻撃軸を率いており、今回の損失は極めて重要な時期に発生した。

もしウクライナ軍がトクマク周辺の塹壕や土塁を突破し、トクマク川を渡れたとしたら、アゾフ海に近い要衝メリトポリまで進軍できる可能性がある。メリトポリ解放に成功すれば、ロシアのクリミア半島への陸上補給路を断つことになる。これは、クリミアをロシアから奪還する試みの下地作りとなる可能性もある。

ただ、ロシア軍のトクマク防衛態勢は、マラトクマチカよりさらに複雑だ。ウクライナ側は、マラトクマチカの前線を迂回できる可能性があるが、トクマクの前線はより広く、密集しているため、迂回はおそらく不可能だ。

第33・47旅団がトクマクの前線の正面突破を強いられれば、車両の損失はマラトクマチカ周辺での損失の規模を上回る可能性がある。そうなれば、続けてメリトポリに進軍する戦闘能力を維持できるかは疑問だ。

誤解のないように言っておくと、第33・47旅団は、ウクライナ軍が現在の反攻に向けて編成した9旅団のうちの2つにすぎず、反攻用の旅団の大半はまだ投入されていない。だが、そうした旅団もまた、前線の南15~30キロにあるロシアの主要防衛線に到着するまでに大きな損失を被る可能性がある。

専門家の多くは、損失ペースが今後さらに悪化するとみており、この調子だとウクライナ軍は全面攻勢開始1カ月で高性能車両の3分の1を失う可能性がある。そうなれば、旅団の多くは戦闘効率を失い始めるだろう。そして、その損失を埋め合わせられる予備車両はおそらく存在せず、あったとしてもごくわずかだ。

米政府は事態の緊急性を認識しているようだ。ウクライナ軍がマラトクマチカ周辺で被った損失分を埋め合わせるため、第2弾となるM2の供与を行う予定だと報じられている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=遠藤宗生

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