教育

2023.06.21 18:00

90年代のニューヨークと「海外での散髪」が教えてくれたこと

(左)中道大輔(右)朝吹大

中道:自信を持つというのは大事なキーワードだと思います。僕は日本人が外に出ないのは問題だと思っているので。外に出ることで自分たちの良いところも悪いところも見えてきますから。例えば髪の毛を切るということで言えば、もう本当に、どれだけ海外で失敗させられたか。
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朝吹:ないですよね。けど僕は海外に行くと必ず現地で髪を切るようにしています。旅先のネタ探しみたいな感じでやっていますが、いろいろ違いがあって面白いですよ。

イタリアでは、切っている途中で美容師がいなくなりました。どうしたのだろうと思ったら、お店の外を通りかかった女の子をナンパしているんです。で、時々僕の方を見て「OK、OK」と言うけど、ちっとも切ってくれない。映画のワンシーンみたいでした。

インドでは、「今日はヒンドゥー教でハサミを持てない日だから休みだ」と嘘か本当かわからない理由で断れられました。上海は、高級ホテルの中にある美容室なのに、座ったままシャンプーするんですよ。一応エプロンはつけるんですけど、ひたすら泡が頭の上から垂れてきて。目に入るし、衿にも泡が入ってきて困っても、英語が通じない。あとで中国の人に聞いたら、当時はそれが一般的だということでした。
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海外はカラーもひどい。向こうの人は日本人より皮膚が強いのか、薬剤が強くて火傷でかさぶたができたことがありました。それ以来、自分でやるようになりました。

中道:すごい文化体験ですね。海外に行くと、人間力がつきますよね。時間通りに電車が来るとか、日本の美容室は細かいところまでケアが行き届いているとか、公衆トイレに普通に入れるとか、そういうベースラインのレベル、平均点の高さは日本の素晴らしいところだと思います。

ところで、10年たってニューヨークから日本に戻られたのはいい区切りだったからですか。

朝吹:それもありますけど、9.11のテロが大きな転機になりました。ワールドトレードセンターがテロで突然なくなり、そこにあるものが未来永劫あるわけじゃないという現実を突きつけられました。ブルックリンに住んでいましたが、家に灰も飛んできましたし。
2001年9月11日のニューヨーク市。ツインタワーの崩壊後、グラウンドゼロと呼ばれる地域から煙が立ち昇る。(Shutterstock)

2001年9月11日のニューヨーク市。ツインタワーの崩壊後、グラウンドゼロと呼ばれる地域から煙が立ち昇る(Shutterstock)

タイムズスクエアには戦車やたくさんの軍人がいて、ニューヨーク上空は戦闘機が毎日バンバン飛ぶ。そしてそういう映像が世界中にニュースとして流れる。アメリカ政府としては、それくらい本気だぞというメッセージだったのでしょう。だけど家の前に戦車がいる、そういう戦争気分はいやだなと思って。それで、10年の区切りでもあるし日本に帰ろうと。

中道:あの時僕は日本で映像を見ていましたけど、現実はきっとすごかったんでしょうね。そういうこともあって10年を区切りに日本に戻られたわけですが、次回は帰国されてからのことを詳しくお聞きしたいと思います。

文=久野照美 編集=鈴木奈央

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