朝吹:グラフィティが全盛で少し危険なイメージだったNYが、ジュリアーニ市長により街が美化され、観光地化していったときでした。文化の違いというのはあまり感じず、街の雰囲気が自分に合っていたのか、同じ目線で会話できるなと感じていました。
中道:すごくわかります。ニューヨークには10年いらしたそうですが、向こうでも美容師をされていたのですか。
朝吹:やってはいませんが、研究はしていました。一番驚いたのは、ある美容業界の集まりで登壇した全米メイクアップ協会の理事長が、前がはだけたシャツを着て、ピアスをしているおじさんだったこと。
スピーチが終わって名刺交換する時に「シャツのボタンをとめないんですね」って言ったら、「ボタンをしないんじゃなくて、ボタンレスのシャツを着ているんだよ」って。自分は胸毛が嫌いで全部剃っているから、それを見てほしいのだと言っていました。
中道:そういうのが許されるっていうか、自分がこうだと思うことをちゃんと自信をもって言えるんですよね。そういう環境が人を伸ばすのだろうなと思います。
朝吹:ある先輩から、アメリカは多民族国家でいろんな宗教や民族があるから、例えば日本の制服のようなルール付けはできないと言われたことがあります。そういう前提があると、自由になるのも納得です。
ただ、Forbes JAPANをはじめ、国内の記事などを見ていると、日本のこんなところはよくないんじゃないかと、自分たちを批判していますよね。そうやって成長させていくのはいいことだとは思います。日本人って啓蒙活動で変わってきた国民なんです。
例えば、日本人は時間を守るし、きちんと並んで電車を待つのがすごいと言われるけど、電車ができた当時は並びもしないでドアが開くと一気に乗り込んでいた。それではいけないと電車の時刻表を作り、この時刻に電車が来るので並びましょうと啓蒙したそうです。
そう考えると柔軟性が高いので、10年ぐらいのスパンを見ればいろいろ変われるのかなと思っています。世界にもっとチャレンジするようになってほしいですよね。
僕は子どものころ、日本は小さな島国だと言われて育ちました。だけど、ニューヨークでオランダ人の友だちから「日本は大きな国でいいね」と言われて、たしかにオランダやベルギーより大きいなと。国土でいえば、若干ですが、ドイツよりも広いです。
そういう意味で、正しい教育や正しい情報があれば、日本人はもっと自信を持つことができて、世界で活躍しやすくなる気がします。