これはロシア軍と同盟軍がウクライナ侵攻前に保有していた現役戦車の3分の2に相当する。ロシア軍にとってさらに悪いことに、集計にはOryxのメンバーがソーシャルメディア上で視認できる戦車だけが含まれる。言い換えると、これは少なく見積もられた数字だ。破壊されたもの、損傷したもの、鹵獲(ろかく)されたものなど、実際の損失は5分の1から3分の1程度多いとみられている。
つまり、1年3カ月にわたる激戦でロシア軍は現役戦車の大半を失ったということになる。もちろん、それらはロシア軍にとって使用できる最高の戦車であり、あるいはそうだった。T-90やT-72B3、T-80BVなどだ。
ロシアの産業界は月に数十両しか戦車を生産できない。そのため現在ある戦車の大半は戦前に長期保存でくすぶっていたものだ。1970年代に開発されたT-72、1960年代に初めて生産された年代物のT-62、そして1950年代に登場したT-55やT-54すらある。
ウクライナ侵攻前のロシアにはおそらく古い戦車1万両が保管されていた。その多くはとっくに錆びていた。1万両のうち何両が修復可能なのか、ロシア大統領府以外、誰もはっきりと知らない。半分か、それとも3分の1か。
いずれにせよ、ロシア軍は1958年製のT-55をロシア東部の第1295中央戦車修理保管基地から引っ張り出してウクライナ戦線に送ることはできない。たとえ800馬力のディーゼルエンジンは無傷だったとしても、新しいシールが必要だ。また、現代的な無線装置や機関銃、そして乗員4人が幸運であれば40年前に使われなくなったものに代わって新しい昼夜対応の照準装置が搭載されるだろう。
ロシアの産業界は高品質の光学機器の生産で悪戦苦闘している。良いボールベアリング、そして最新の照準装置の不足は、戦車の生産や古い戦車の改良を妨げる大きなボトルネックとなっている。