スポティファイは今年2月、プレイリストをキュレートし、楽曲に関する情報を音声で提供する新機能「DJ」を米国とカナダのプレミアムユーザー向けにリリースした。DJは地上波ラジオとは異なり、内容がユーザーごとにパーソナライズされているのが特徴だ。
音声による解説には、スポティファイが昨年買収した文章から驚くほどリアルなボイスを生成するAI音声プラットフォーム「Sonantic」が用いられている。
同社は北米でのDJ機能の提供開始に続いて、英国とアイルランドのプレミアムユーザーたちにも、DJが利用できるようにした。対象となるユーザーは、アプリのミュージックフィードからDJカードをタップすると、この機能を利用できる。
DJの開発で重要な役割を担ったのが、スポティファイでカルチュラル・パートナーシップの責任者を務めるXavier "X" Jerniganだ。Xは、DJの声のモデルになっているだけでなく、社内の音楽エディターらと協力して、DJがユーザーに最適な情報を提供するための取り組みを進めている。彼は、AIを訓練するに当たり、人間らしさを追求したという。
筆者がDJ機能を初めて利用したとき、DJは自身をXと自己紹介し、「私はAIだが、時間を設定したり、照明をつけたりすることはない」と話した。そして、筆者が2012年によく聴いていたサンティゴールドの「Disparate Youth」をかけ、本物のDJのようにイントロが終わるギリギリで話を終えた。
「我々の社内には、文化の専門家とクリエイティブプロデューサーが在籍しており、文化や音楽業界で起きていることや、当社とアーティストやレーベルとの関係など、あらゆる知識を用いてキュレーションを行っている。この機能はDJの代替ではなく、より強化するものだ」とJerniganは語った。
Jerniganは、スポティファイの番組「The Get Up」でホストを務めており、一部のユーザーの間でよく知られた人物だ。「The Get Upでホストを務めたとき、私はためらうことなく自分らしさを出した。そのことが、今のDJにつながっている。DJの声は私そのものだ」と彼は言う。