アムネスティは16日に発表した報告書「死刑判決と死刑執行」の中で、中国について正確な数字を示していないが、同国では昨年、数千件の死刑が執行されたと考えられるとした。中国を除く地域で死刑執行数が最も多かったのは中東・北アフリカで、2021年の520件から昨年には825件に増加した。
イランの死刑執行数は中国に次いで多く、昨年576人が処刑された。同国では昨年9月、クルド系女性のマフサ・アミニ(22)が服装規定違反の疑いで逮捕された後に死亡したことを受け、民衆の抗議が相次いだ。イランに次いで執行数が多かったのはサウジアラビアで、昨年196人が処刑された。
国連人権理事会の死刑に関する特別報告者を務めたこともあるアムネスティのアニェス・カラマール事務総長は、「サウジアラビアは81人もの人を1日で処刑した」と指摘した。この大量処刑が行われたのは昨年3月12日で、殺人から反政権運動まで、さまざまな罪で多数の人が処刑された。
死刑廃止を訴える非営利団体リプリーブは先に、サウジアラビアのサルマン国王と息子のムハンマド・ビン・サルマン皇太子が2015年に政権を握って以降、同国の死刑執行率がほぼ2倍に増えたと指摘していた。
また、イランについてカラマール事務総長は「民衆の蜂起を鎮めるため、抗議する権利を行使しただけで人々を処刑した」と非難した。
イランやサウジアラビアのほか、エジプトでは24人、米国では18人の死刑が執行された。昨年の世界全体の死刑執行数は前年比51%増の883件で、過去5年間で最も多かった。これはわずか20カ国の数値であり、死刑の統計を公表していない国もあることを考慮すると、実際の数はこれよりはるかに多いとみられる。中国のほか、北朝鮮とベトナムも死刑執行数が明確でないため、アムネスティの報告書には含まれていない。
死刑廃止の流れに加わる国が増加
アフガニスタン、クウェート、ミャンマー、パレスチナ、シンガポールの5カ国が昨年、死刑執行を再開したのに対し、死刑を全面的または部分的に廃止した国も6カ国ある。うち、カザフスタン、パプアニューギニア、シエラレオネ、中央アフリカ共和国は全ての犯罪に対して死刑を撤廃。赤道ギニアとザンビアは一般的な犯罪に対してのみ死刑を廃止した。また、リベリアやガーナなど、死刑廃止の方向に向かっている国もある。その他にも改善の兆しはみられた。アムネスティによると、イエメンでは昨年、内戦が沈静化したことにより、死刑執行数が前年比で71%減少。米国では2021年に比べて死刑執行数が64%増加したものの、過去に比べると比較的少ない数字にとどまった。
他方で、麻薬関連の犯罪で処刑された人の数は、前年の2倍以上に増加。中国やサウジアラビア、イラン、シンガポールで麻薬関連の死刑が執行された。これについてカラマール事務総長は、死刑は意図的な殺人を伴う「最も重大な犯罪」に対してのみ執行されるべきだとする国際人権法に違反していると指摘。「報告された死刑執行の40%近くが麻薬関連の犯罪によるものだった。重要なことは、この無情な処罰によって不相応な影響を受けるのは、恵まれない環境にある人々が多いということだ」と述べた。
この傾向は今年も続きそうだ。3月には、麻薬関連の罪でヨルダン人のフセイン・アブカイールがサウジアラビアで処刑されたが、支持者らは、この有罪判決は拷問によって引き出された自白に基づくものだと訴えていた。
(forbes.com 原文)