ドメニコ・ヴィシナンザは、ケンブリッジにあるアングリア・ラスキン大学の研究者であり、作曲家でもある。得意分野の1つが、数値や測定値を音に変えるデータソニフィケーション(可聴化)だ。変換された音は、音楽を作るために使用され、5月9日に行われたカンファレンスInternet2 Community Exchangeで彼はデモンストレーションを行った。
会議の壇上でヴィシナンザは、米国地質調査所が収集したイエローストーン国立公園の地震計データにアクセスした。自身が開発したコンピュータプログラムを使って、そのデータは譜面に変換され、ウェストバージニア州フェアモント州立大学のフルートおよび音楽学客員准教授アリッサ・シュワルツによって演奏された。
ヴィシナンザとシュワルツは、以前にもイエローストーン国立公園のデータに基づく作曲活動で協力したことがあったが、カンファレンスでは2人がそれまで見たことのないライブデータを使った。ヴィシナンザがステージ上でデータを譜面へとライブで変換すると、シュワルツは聴衆の前で初めてそれをフルート演奏した。
シュワルツはまず、譜面どおりに音符を演奏した。事実上、それは地震波を楽譜に直接マッピングしたものだった。シュワルツはもう1度演奏し、今度は自身の芸術的解釈を加え、たとえば繰り返しパターンを認識したり、特定の部分を強調したりした。下の動画で彼女がこれを行う様子を聞くことができる。
一方、先週行われた米国音響学会の例会では、コリン・マロイが、海洋データを音楽演奏に変えるところを披露した。マロイは、カナダのビクトリア大学が運用する海洋観測施設であるOcean Network Canadaの2022年アーティスト・イン・レジデンス(招聘アーティスト)として、滞在期間中に海洋測定データに基づく打楽器音楽を制作した。
マロイは『Oil and Water』という作品で、水に侵入する石油を示すノイズを使用した。楽曲は、過去120年の中でこの数十年間に石油生産が増加したことを実演で表現した。下のビデオは、今年行われた別のイベントでこの曲が演奏されたときのものだ。
地震活動のものであれ海洋計測のものであれ、データを音楽に変えることは同じ情報を図やグラフで見るのとはまったく異なる体験を提供する。そうすることで、パターンをよりわかりやすく表現したり、プロセスが時間とともに変化する様子を見せたりすることができる。
「人間はパターンを聞くことができるし、パターンを認識することもできます。私たちの耳はそれを得意としています」とヴィシナンザがアトランタで行われた講演の前に語った。「そうやって音楽は科学者の力になることができます。目の見えない科学者が音楽を使って科学研究をするところを想像してみてください」
データから音楽を作ることによって、科学情報を新たな聴衆に届けることもできる。マロイは米国音響学会に向けた声明で次のように話した。「これらの楽曲を聴くとき、それぞれの曲が何を表現しようとしているかを考える機会にしてほしいと思っています。最終的に、海洋を取り巻くさまざまな問題への認識を促す手助けになることを願っています」
(forbes.com 原文)