都内城南3区(世田谷区・目黒区・渋谷区)、投資用新築一棟RCマンション、土地の仕入れから物件管理までをワンストップで手がけることにこだわる、その戦略とは?
都内でも人気が高い城南3区(世田谷区・目黒区・渋谷区)内に位置し、耐震性のある新築一棟建てRC(鉄筋コンクリート)マンションであること。それがフェイスネットワークの投資用マンションの条件だ。さらに自社で土地の仕入れから設計・施工、入居者募集、不動産管理までを手がけることにこだわり、“長期的視点で資産価値が期待できる”不動産投資のビジネスモデルを構築したという。
その考え方は、2期連続最高益を実現したフェイスネットワーク躍進の源となったとも言えるが、同社代表取締役社長の蜂谷二郎はなぜそうした一風変わった戦略をとったのだろうか。
コロナ禍においても住宅需要は消えることがない
まずはコロナ禍を機に、目まぐるしく乱高下したように見える日本国内の不動産投資市場の現状から、蜂谷に聞いた。「東京2020オリンピック・パラリンピックの開催に向けて不動産価格は急上昇しましたが、コロナ禍により、オフィスやホテル、商業施設の価値が下落しました。ただ住宅に関しては、プライベートとリモートワークの両立が可能な環境を求める人々の需要があり、堅調な動きを続けていました。
振り返れば1990年のバブル崩壊、2008年のリーマンショックのときも、不動産業界全体は打撃を受けましたが、こと住宅に関しては変わらず堅調だったのです」
もちろん住宅需要の変化はあった。その特徴を、蜂谷は以下のように指摘する。
「在宅時間が長くなったことにより、住空間により付加価値を求めるようになったのです。スペースをうまく活用し、機能的で住みやすい空間。それはまさに、私たちがこだわり続けてきたよいマンションの定義と、見事にシンクロしていました」
投資には長期的な視野が必要。家は10年たって価値がわかる
蜂谷のキャリアのスタートは、信用金庫の融資担当だ。13年の在職の間には、顧客の相続を機にしたアパートへの投資などの相談を多数受けたという。「業務のなかで実感したのは、直近の配当、利回りやコストばかりに着目して、長期的な視野をもたない投資は失敗するということです。建物は、10年たてば劣化します。木造アパートはその傾向が顕著で、家賃7万円で計画していても10年後には5万円でしか貸せなくなってしまうこともある。つまり長期的な視野がもてていないという課題があったのです。さらに顧客、デペロッパー、ゼネコン、金融がそれぞれの立場でしか考えず、全体を俯瞰する人間がいませんでした。これでは将来も安心な資産づくりなどできません」
融資担当だった蜂谷には、目の前にいる顧客のそうした不動産投資の悩みに応えることはできない。そこで“長期にわたってオーナーに安定した利益を提供し続けられる”物件を生み出すための仕組みづくりとして起業したのだという。
お客様の人生をサポートする、空室がない部屋づくりを目指す
蜂谷が掲げた経営理念は「我々は一人一人の夢の実現をサポートするワンストップパートナーであり続けます」だ。その思いは、「憧れの海外移住」や「自分に何があっても、自分の子どもが生計を立てられるように」などの顧客の真剣な夢を実際にかなえていくことで強化されたという。
「まるでお客様の人生をサポートしているような充実感が、そこにはあるのです」と蜂谷は言う。そのために構築したビジネスモデルには、以下の3つのポイントがある。
・入居者目線の居住性と新築一棟RC
「マンションを事業として考えれば、必要なのは空室がない部屋づくりに尽きます。そのため私たちは、業界では珍しい自社設計・施工を行っています。デザインと居住性に徹底的にこだわって、入居者が住みたくなる“よいもの”をつくるのです。新築一棟RCマンションにこだわるのも、劣化しづらく、耐震性に優れているため、資産価値が持続することが理由です。
・城南3区に特化
「都心に近く緑が多いことで賃貸需要が高いのが城南3区(世田谷区・目黒区・渋谷区)です。実際に250超の弊社物件の入居率は目を見張るものがあります。また、世田谷区は開発用地案件が出ない印象が強いのですが、当社には同区での優良物件開発の実績があることで、独自のネットワークでいち早く情報が入ってきます」
・自社によるワンストップサービス
「土地の仕入れから設計・施工・販売・入居者募集・物件管理に至るまで、すべてのプロセスを自社で管理しています。城南3区の建築規制に合わせた設計が可能で、住みやすさにこだわって、土地の形状などを考慮して4階建てで15タイプの異なる間取りになった物件もあります。自社施工なので、資材価格もリアルタイムでわかりコスト削減もしやすく、施工期間も当社開発物件の規模であれば、1〜2年で完成することができます。その結果、コロナ禍以降激しくなった値動きのなかでも、適切に収益性を判断できるのです」
フェイスネットワークの物件事例。左上:明治神宮の緑を感じながら暮らせる「グランデュオ代々木3」。左下:中:デザイン性の高いファサードが特徴的な「グランデュオ下北沢8」。右:フェイスネットワークの物件事例。上:開口部をできるだけ設け、全部屋で採光・通風を感じられる「グランデュオ大森2」。
そしていま、新たな挑戦として蜂谷が手がけ、すでに5件目に着手しているのが、不動産小口化商品「グランファンディング」シリーズだ。
相続対策に適した投資商品の需要が拡大するなか、当社一棟販売物件の大型化に伴う価格の上昇もあり、比較的安価で投資できる、1口100万円(5口以上)からの投資商品化に至ったという。
「小口化商品を開発したのは、高齢化社会を迎えた日本の、60代以上が現預金で保有する金融資産700兆円を背景とする相続問題にあります。もともと相続税対策として人気のある不動産ですが、相続時に1棟の不動産を3人の子どもに共有で相続した結果、取り分で争いになるといった事例が頻発しています。不動産小口化商品で資産を保有すれば、口数に応じて3人なら3分の1ずつ分割相続できるので、こうした問題は解消されます」
フェイスネットワークは先だって中期経営計画「NEXT VISION 2026」を発表した。
2026年までの3年間、売上・利益共に過去最高を更新し続けるとともに、前期配当を2倍にしたうえで配当性向目標を35%とし、今期以降のさらなる増配を目指すという。
「今後、インバウンドをターゲットにした多数の高級賃貸レジデンスが誕生していきます。当社では東京の賃貸用不動産が値崩れする要素はないと考えています。東京23区のさまざまなエリアで引き続き再開発が予定されているので、そこに働き、住む日本人のニーズはむしろ増加すると考えていいでしょう。そんなときに、選ばれるよい物件をつくり続けたいですね」
はちや・じろう◎1988年に信用金庫入庫、融資担当者として13年勤務後、2001年にフェイスネットワーク設立。03年、渋谷区松涛に自社物件第1号を建設。18年にマザーズ上場、21年に東証一部へ上場(現東証プライム市場)を果たした。