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2023.05.25 11:00

デジタル化が進むほどに問われる「人間力」。激変する世の中で保険業界が担う役割と使命感

国内及び米国において保険代理店・ブローカーのサービスを展開するエージェント・インシュアランス・グループ代表取締役兼CEO 一戸敏が、東京海上日動火災保険取締役社長の広瀬伸一と対談。激動の時代における保険の価値の変化や将来展望を語った。


―コロナ禍や自然災害などの大きな環境変化が起こり、その一方でデジタル技術が進化するなか、保険業界や保険代理店の役割はどう変化していると感じますか。

広瀬伸一(以下、広瀬):保険とは、災害や事故、病気、あるいは新たなことを始めるといったお客様の「いざ」という場面を守り支えるものです。環境が変化しても保険が担うこの使命に変わりはありませんが、デジタル活用が進み、お客様の守り方も変わっていくと考えています。サービス開発や業務プロセスの効率化に留まらず、災害や事故発生時の調査・分析はAIを活用することで迅速な対応が可能となり、お客様の守り方を進化させています。ただ、これだけ不安定な世の中ですから、お客様は保険に加入しているだけでは安心できません。専門家である保険代理店がお客様に寄り添い、最適な保険をご提案することでご提供できる「安心感」の重要性が増しています。
"社会の変化に柔軟に対応し、社会課題解決に 寄与していきたい。" 広瀬伸一

"社会の変化に柔軟に対応し、社会課題解決に寄与していきたい。" 広瀬伸一

デジタルとリアルの融合で安心感を提供

一戸 敏(以下、一戸):お客様と接する役割を担う保険代理店にとって、保険商品だけでなく、「あんしん」と「あんぜん」をどうお届けすべきかは、コロナ禍においてより一層真剣に向き合ってきたテーマです。オンライン面談や、お客様に合った保険商品を提案するアプリケーション開発をはじめ、お客様とのデジタル接点は格段に増えました。ただ、いくらデジタル化が進んでも、人と人のコミュニケーションによる「ぬくもり」は引き続き大切にして、「あんしん」と「あんぜん」をご提供していきたいと思います。デジタルを活用して業務の生産性を上げつつ、最後の安心感はリアルでお届けするなど、デジタルとリアルを組み合わせるべきだと考えています。

広瀬:デジタルと人の力をベストミックスさせることが大切ですね。例えばAIを扱うにも、人間がAIに情報を入れていかなければ、お客様に最適なカスタマイズ提案はできません。その情報は申込書に記載されているものだけでなく、営業現場でヒアリングした生の声こそがAIにとって貴重になるでしょう。そして、お客様へのご提案内容を最後に決めるのは、AIよりもお客様を知り尽くしている代理店であるべきだと思います。

時代に応じた課題解決が求められる

―保険業界と深く関係する社会課題には、どのようなものがあるのでしょうか。また、その社会課題に対する取り組みを教えてください。

広瀬:そもそも、損害保険業界はこれまでも社会課題解決に貢献しながら成長してきました。日本の発展のため、海上保険からスタートしましたが、その後も交通事故や自然災害など、時代ごとの社会課題に対応する商品・サービスを提供してきました。近年、新たに向き合っている社会課題には、サイバーアタックへの対応や脱炭素などがあります。また、数十年に1回といわれるレベルの自然災害が毎年のように起きている時代ですから、防災や減災は、保険会社だけでは成し遂げられません。防災コンソーシアム「CORE」には、さまざまな業界の企業や団体、90社超に参画いただき、自然災害への対応を進化させています。その他にも、日本企業の99.7%を占める中小企業の支援も重要です。日本の発展には、各地域で活躍する中小企業の成長が欠かせません。保険商品のご提供だけでなく、いざという時にお役に立つ情報発信やサービスのご提供を行うことで、災害や事故が起きても事業を継続するための支援をしています。

一戸:中小企業のお悩みは100社100通りですし、数か月単位で変わっていくものです。我々保険代理店は、各社の課題に真摯に向き合い、保険を最適な形でカスタマイズしてお届けすることの積み重ねで、社会課題のひとつである地域創生にも貢献できるものと考えています。

”潜在リスクを顕在化し、お客様一人ひとりに寄り添い 続けることが使命。" 一戸 敏

”潜在リスクを顕在化し、お客様一人ひとりに寄り添い続けることが使命。" 一戸 敏


―環境変化や社会課題が次々と起こるなか、どのような行動が必要でしょうか。

広瀬:保険とは、事故や災害、あるいは新たなチャレンジをするときなど、お客様の「いざ」を支えるものでしたが、リスクの予防や、事故や災害が起きた際のサポートも担い、「いつも」支える存在になるべきだと考えています。お客様が抱える“リスク”と“保険による補償”、あるいは“不安”と“安心”の間にギャップがあると「いざ」というときに守れませんので、我々は、新たなリスクに対応する商品・サービスも開発しながら、保険代理店と協力して、これらのギャップをなくしていきたいと思います。

一戸:お客様とコミュニケーションし、不安と安心のギャップを埋めるのは、保険代理店の役割です。これまでの損害保険は、家や自動車といった顕在化した「モノ」にかけるものが主流でしたが、最近は、サイバーリスクなど目に見えないものへのリスクが深刻化しています。我々は、こうした潜在リスクを顕在化して、お客様へ伝えていかなければなりません。中小企業では、サイバーリスクへの危機感をおもちでない経営者の方もまだ多く、リスクと補償、不安と安心のギャップが大きいのが現実です。万が一のことが起きてから、保険に入っておけばよかったと後悔する「保険飢餓」に陥らないようにすることは、保険代理店の大切な使命だと考えています。

広瀬:日本はアメリカと比べると、サイバーリスク保険の付保率が著しく低いのが現状です。これまでの歴史を振り返っても、新たな保険サービスは普及までに時間がかかるものですから、我々もサイバーリスク保険の普及に努めたいと思います。

「保険人」として人間力を高める

―保険の役割の広がりや新たな価値提供など、保険業界の皆さんの仕事の難しさは増しているのではないでしょうか。

一戸:保険はかたちのない商品ですから、代理店である我々はお客様から信頼される存在でなければなりません。今後ますます問われるのは、我々の「人間力」です。人間力の醸成を人財育成の重要なテーマにして、投資をし続けることが大切であると思っています。東京海上グループで生み出された「保険人(ほけんびと)」という言葉があります。保険を通してお客様の財産を預かる立場として、お客様を守り抜く使命感をもち、信頼に足る人間にならなければなりません。



広瀬:人間力は、座学で身につくものではありませんね。人と人との関わり合いによって鍛えられるものだと思います。デジタル活用だけをがんばっても、人間力は磨かれないと思うのです。

一戸:同感です。私自身は、お客様に鍛えていただいていまがあると思っています。難しいご要望をいただいたときも、どうにかお応えしたい一心で仕事をしてきました。その経験の積み重ねによって、人として成長できたように感じます。

―今後の展望をお聞かせください。

一戸:難局が続く時代においては、お客様・保険会社・保険代理店の3者が全員幸せになる「トリプルウィン」を目指していくべきだと考えています。保険会社が開発した保険商品を保険代理店がお客様にお届けし、価値をご提供する。それに対し適切な対価をいただき、保険会社はさらなる商品開発を手がけ、保険代理店はさらなるサービスの質の向上を図る。この輪を広げていくことで、世の中はよくなっていくと思うのです。

広瀬:これからも、新たなリスクが次々に出てくるでしょう。保険業界は変化に柔軟に、かつスピーディに対応していく必要があります。今後も、保険代理店とともに社会課題を解決し、日本経済と社会の発展・成長に寄与したいと考えています。


エージェント・インシュアランス・グループ
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いちのへ さとし◎エージェント・インシュアランス・グループ代表取締役兼CEO。1968年、北海道札幌市生まれ。明治大学商学部中退後、会計事務所に約6年間勤務。96年に創業し、2001年にサンインシュアランスデザインを設立。21年にエージェント・インシュアランス・グループへ社名変更後、22年12月22日に名古屋証券取引所メイン市場に上場、現在に至る。

ひろせ しんいち◎東京海上日動火災保険取締役社長。1959年、岐阜県生まれ。名古屋大学経済学部卒。82年、東京海上火災保険(現・東京海上日動火災保険)入社。東京海上日動あんしん生命保険取締役社長、東京海上ホールディングス専務執行役員などを経て、2019年4月より現職。

Promoted by エージェント・インシュアランス・グループ / text by Takako Miyo / photographs by Takayuki Abe / edit by Kana Homma