ロスバル氏やボットゥーラ氏が積極的に仕事の斡旋も行い、第1期の卒業生でもあるブレッシングさんは、現在オステリア・フランチェスカーナのパン部門で働いている。この3期生の中にも、既に就職先が決まっているメンバーもいた。
ロスバル氏は「卒業した後に、皿洗いや掃除など、せっかく習得した技術が活かせない仕事に押しやられてしまわないようにすることも、私たちの任務」だと語る。
「ルーツ」厨房のスーシェフとして雇用されているギニア出身の一児の母、ファンタ・ディアビーさんも、第1期の卒業生。そのほかの卒業生も足繁くこの場所を訪れるため、研修生は自分たちの将来像を描きやすくなるなど、ひとつのコミュニティとして機能している。
また、難民や移民の流入によりイタリアの失業率が上がると考える人々もいる中で、料理を通して文化交流を図ることで、ルーツは多様な民族がともに暮らす豊かさを伝えるという役割も果たしてる。
既存のスタイルにとらわれず、食の力で社会問題の解決に取り組むボットゥーラ氏。筆者が訪問した約1週間前には、インドのニューデリーでノーベル平和賞受賞者のカイラシュ・サティアルティ氏が創設した基金のチャリティディナーを行っており、その精力的な活動はたゆみなく続いている。
「インドでは、一部の貧困層の間で、物乞いの際に同情を買うために、親が子供の体に傷をつけることが行われている。今回のディナーは、収益がそんな子供たちを守るためのシェルターに使われると聞き、訪問を決めました。私の仕事は料理をすること、喜びや幸せを与え、共有すること。影響力を持っているなら、それを正しく社会のために返して、役立てる責任があるのです」
ALSO
【関連】世界ナンバーワンシェフの「人が辞めない」組織づくり