自分の感覚と思考を持つ ある絵画教室と星野リゾート社長の教え

中道:ロンドンのど真ん中にあるアイリッシュパブでアルバイトをしていた時に、スコットランドやアイルランド出身の常連客のアクセントは癖が強くて何を言っているのかさっぱりわかりませんでした。向こうの人たちって自分の方言を直すという概念がないんですよ。東京では話をしている時にあまり方言を聞きませんよね。大阪の人くらいかな。
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この違いって何なのだろうと思った時に、海外の人たちには自分たちの地域に対するプライドみたいなものがあるのかもしれないなと。

南雲:私、土はすごいと思っていたけれど、最初のころ、その話をするのが嫌だったんです。なんかダサいという感じがあって。そういう思いがなくなったのは、デッサン教室に通うようになってからなんです。そのデッサン教室はちょっと変わっていて、見たものではなくて感じたものを描くんです。

写実的に絵を描くと対象物があるから上手か下手かわかるけれど、その教室では重さと触感と動きを描くので、「これ、違うよね」って絶対に誰も言えないんです。それをやった時に、好きなら好きでいいじゃんって、自分の感覚に自信を持つことができたんです。
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そこから土の話も堂々とできるようになったんですよね。これは日本人に必要な感覚だと思います。もし、この訓練を幼稚園や小学校でしていたら、自分の感性に自信を持てるようになるんじゃないかなと。

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中道:面白い教室ですね。メディアの件も、メディアの中の人たちは世界に目を向けて、外との接点を持たないといけないと思います。そうでなければ、すごく限られた範囲の料理された情報しか入ってこないですからね。

南雲:1億総メディア時代と言われて久しいけれど、はたして自分の考えを発言している人がいかほどいるのか。誰かが言ったことをさも自分の考えのように言うのは思考停止ですから。

星野リゾート時代に、星野社長にプレス発表会の提案をしたんです。そしたら「それはダメ。南雲さん、全然考えていないから、ちゃんと考えてよ」と言われました。雷を食らったようにショックでした。

それで考えるって何だろうと思って、野矢茂樹さんの「はじめて考えるときのように」(PHP研究所)という本を読んだんです。そして「考える」にはお作法があることを初めて知りました。

結局、自分が提案したのはAをBに替えただけのもので、星野社長が言ったように考えていなかった。お作法に沿って考えると思考停止にはならないし、突き詰めて考えられるので事の本質がわかってきます。
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【前編】土から地域の魅力を発掘 地域ビジネスプロデューサーの視点

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文=久野照美 編集=鈴木奈央

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