商社以外にも割安感がある日本株への投資に意欲的だ。日本株・日本経済があらためて、世界から注目されており、割安の是正には、日本国内でも動きがある。
PBR1倍割れの問題点
東京証券取引所は今年1月、継続的にPBR(株価純資産倍率)が1倍を割っている上場企業に、対応策を議論し開示することを要請する方針を示した。PBRは、株価が、1株当たり純資産の何倍まで買われているか、すなわち1株当たり純資産の何倍の値段が付けられているかを見る投資尺度だ。1倍を下回り続ければ「解散価値割れが続いている」ことになり、企業が資本効率を重視していないと見なされやすい。東証プライム上場企業の約半数は1倍割れとなっている。割安で放置されている企業は、アクティビスト(物言う株主)にも狙われやすく早期の改善が求められる。
東証は3月末には、約3300の上場企業に対し、企業価値向上に向けた計画を策定・開示し、年1回以上見直すよう正式に要請を出した。これに応じて、あるアクティビストは投資先に対して「PBR1倍以上を目指す計画の策定・開示」を求める議案を含む株主提案を出すなど、動きが活発化している。
自社株買いは本質的ではない
東証からのPBR是正要請を受け、自社株買いを発表する企業が増加している。2022年度の自社取得枠の設定金額は9兆円と過去最高。自社株買いをするとPBRが是正されるロジックはこうだ。PBR=ROE(自己資本利益率) × PER(株価収益率)。自社株買いにより、ROEの分母である株主資本が減少し、ROEが上昇。PBRが改善。
しかし、PBR是正の本来の目的は稼ぐ力を高めることだ。PBR是正は、企業のキャッシュの使い方や、事業ポートフォリオのあり方を問うている。
・自社の資本コストを理解し、それを上回るリターンが得られる事業に投資する
・採算が悪い事業は見直しや売却の判断をする
こうした財務の、ものの考え方をもう一度しっかりとやって欲しいというのが東証のメッセージのはず。自社株買いを打ち出して、改革のメッセージをマーケットに伝える姿勢は素晴らしいことだが、単に、資本を減らす作業に終わらないことを願うばかりだ。