建設許可の取得には300日以上も
しかし、フードホールがにわかに増えている裏側には、さらに深刻な事情もあるようだ。筆者は取材するなかで、こんな話を聞いた。ある飲食店関係者の話だ。「最近、州政府のあらゆる許可申請が滞っている。建設許可に関しては300日以上もかかることがあり、実質、工事が進まない状態だ。しかも以前なら申請を待つ間に先取りして工事を行なうのが通例になっていたが、最近はそれも認められない。住宅ならまだしも、商業スペースはその間営業ができずに家賃だけを支払うことになる」。
そのため、とくに許認可の多い飲食業の場合、いわゆる「居抜き」で物件を借りることで許可申請の手続きをなるべく省こうというパターンが多い。最近オープンしたほとんどの飲食店は、以前飲食店だった場所にできている。
ただでさえ、以前からリカーライセンス(アルコール類を提供する免許)取得の厳しさは有名だったハワイ。そこにさらに建設許可にも時間がかかるとあっては、コストのかかる海外出店で「お手上げ」になる日本人オーナーがいても、不思議ではない。
さらにこんな話もある。地元のニュースによれば、ホノルル市計画許可局(略称DPP:Department of Planning and Permitting)では、長年汚職に手を染めていた職員が軒並み逮捕されてしまい、深刻な人手不足に陥っているというのだ。
「以前は、DPPの職員に知り合いがいるとか、”贈り物”を持っていったりすると許可が早く下りたという話も聞いた。持ちつ持たれつでうまく回っていた感があったが、今回の逮捕劇で汚職職員が一掃され、規定をしっかり守る職員ばかりになってしまった」
こう語るのはある建築事務所関係者だが、さらに人手不足が追い打ちをかけている。専門知識が必要なのに「民間企業との給与の差が大きく、職員の採用は非常に困難な状況」との計画許可局からのコメントが報道されるほどだ。
苦肉の策で、ハワイ州は一部の業務を外注したそうだが、今度はきちんと審査しているか不明となり、監査に人手が必要になって本末転倒という始末だ。
さらに、昨今の物価高騰で「1年以上も待ってやっと許可が下りた頃には、金利や材料費が上がって、申請した計画のままでは結局建てられないということもある」というから、当事者にとっては本当に笑えない話だ。