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2023.04.14

孫泰蔵のエッジオブ、ソフトバンクGの投資部門を買収

Getty Images

孫正義が率いるソフトバンクグループは、多額の損失を抱える中、アーリーステージに特化したベンチャーキャピタル部門のソフトバンク・ベンチャーズ・アジア(SBVA)を、孫の弟である孫泰蔵が3月に設立した「エッジオブ(The Edgeof)」に売却すると発表した。売却額は非公開としている。

ソフトバンクグループとエッジオブは4月12日、この取引を規制当局の承認を待って、今年後半に完了する予定であると発表した。シンガポールに拠点を置くエッジオブは、ベンチャーキャピタルMistletoeの創業者である孫泰蔵と、元ソフトバンク幹部の大蘿淳司によって設立された。

SBVAのCEOのJoonpyo Leeは声明で「エッジオブとともに新たな旅を始められることをうれしく思う」と述べた。「新たなチームに加わることでSBVAは、その専門知識やネットワークを活用し、先見性のある起業家の活動を支援し、アジアを超えた持続的なグローバルインパクトを与えることができる」と彼は続けた。

ソウルに拠点を置くSBVAは、AIやスマートロボティクスなどの技術分野をターゲットに、約20億ドル(約2600億円)を運用し、投資先には、シンガポールの自動車マーケットプレイスのCarro、インドネシアのオンラインマーケットプレイスTokopedia(現在はGoToの一部)、韓国の再販プラットフォームDanggeun Marketなどがある。

SBVAの投資先企業のうちの5社(Apartmentary、Doctornow、Endowus、Payhere、Toss Lab)は、昨年のフォーブスアジアの注目企業リスト100 to Watchに選出されていた。

ソフトバンクは、2月に発表した2022年10-12月期(第3四半期)の決算で59億ドルの純損失を計上し、スタートアップへの投資額を90%減少させたと報告していた。これは、ソフトバンクの旗艦ファンドであるビジョンファンドが、新興企業からのリターンが激減する中で苦戦したためだ。この事情に詳しい関係者はフォーブスの取材に、ソフトバンクが、破綻した暗号資産取引所FTXへの1億ドルの出資をゼロにした後、ブロックチェーン関連の投資をほぼ全面的に引き上げたと語っていた。

昨年8月に孫泰蔵はSBVAを1億5000万ドルで買収する計画を立てていたと、韓国の現地メディアが関係者の話を引用して報じた。その当時、苦境にあったSBVAの他の売却先候補との交渉は、小売コングロマリットである新世界グループとの交渉を含め、不調だったとされる。

孫正義よりも15歳年下の孫泰蔵は、1998年にガンホー・オンライン・エンターテインメントを立ち上げ、かつて世界で最も売れたモバイルアプリゲーム『パズル&ドラゴンズ』で知られている。彼の投資会社のMistletoeは、ドローン配送プロバイダーのZiplineやPCゲームのユニコーン企業Playcoなどを支援している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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