キャリア

2023.04.07 10:00

AIが溢れる未来、私たちのリタイア時期は遅くなる

これが読者に、アルトマンが必要だと考える所得保障が、実際には必要でない理由を理解してもらえる助けとなると良いと願う。また、それがなぜ近い将来、退職という概念を古びさせてしまうのかを説明してくれることを願っている。

なぜそうなのかを理解するために、人間と機械が協力して働くことをもう一度考えてみよう。その生産性は飛躍的に向上する。これは、米国や世界中の人々に食料を大量に提供するのに、わずかな「手」で済んでいる理由を説明している。また、かつての贅沢品であった自動車が一般的になった理由や、特に現代を考慮すると、世界中の最も裕福な人々と最も貧しい人々の両者がスーパーコンピュータにアクセスできている理由も示している。

ここで、ChatGPTに戻ってみよう。今わかっていることは、世界中で専門的に機械化された方法で他の人間と協力する人間が、驚くべき量を生産できるということだ。では、モノの生産がこれまで増え続けてきたように、思考が増幅されていく人間がどれだけのものを生産できるかを想像してほしい。

現実的には、1900年に生きていた人が、2023年はもちろん、2000年の時点で私達が享受していた無数の喜びを正しく推測することはできなかったのと同じ理由で、現在の私達にも先のことを合理的に考えることは不可能だ。唯一の妥当な推測は、思考の増幅によって、今は豊かだと思っている現在が、未来には野蛮な貧困だったと思い出されるようになる可能性があるということだ。この幸せな真実は、退職に重要な意味を持っている。良い意味でだ。

実際、生産と思考の機械化が進むことで、私たちが楽しんでいるもの(そしてまだ楽しむことを知らないもの)が安価で当然のものになるならば、それにともなって仕事は本当に個々の才能を反映した個別化されたものとなるだろう。言い換えれば、ロボットの手と頭脳による飛躍的な生産増加が、人間の世界に対して、まったく「労働」のように感じない多くの仕事をもたらすことを意味する。

アルトマンの言葉への反論としては、明日の仕事は「やらずにはいられないもの」になるのだから、所得保障はいらないということになる。そして、仕事が喜びによって定義されるようになるために、退職は私達にとってますます縁遠いものとなっていくだろう。

forbes.com 原文

翻訳=酒匂寛

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