ビッグマウスは借金と似てる──。本田圭佑(36)が2020年に述べた言葉だ。
サッカー日本代表選手時代から「W杯優勝」など壮大な野望を公言するたびに、大口をたたくなと批判されてきた。それでもビッグマウスを貫く理由を、本田は借金になぞらえた。どちらもリスクが伴うが、夢を見ることができる。そしてうまくいけば、高いリターンを得られる。
実際、本田の投資はハイリターンだ。最初の投資会社「KSK Angel Fund」を立ち上げたのは30歳、イタリアの名門ACミランでプレーしていたときのこと。その2年後には、ハリウッド俳優のウィル・スミスとVCファンド「Dreamers Fund」を設立し、世間を驚かせた。同社が投資したスタートアップ94社のうち、2社がデカコーン(時価総額100億ドル以上)、9社がユニコーン(時価総額10億ドル以上)に成長。10社に投資して1社が当たれば成功とされるVC業界で、本田は着実に結果を出している。
22年10月、今度は米コメディ俳優ケヴィン・ハートをパートナーに引き入れ、投資支援会社「XPV」を設立。同社には、20歳にしてスタートアップ株式の取引所「Forge」を創業して上場させたソーヘル・プラサドが、エグゼクティブチェアマンとして名を連ねる。
本田のもとに“大物”が集まるのはなぜか。キーワードは、XPVの合言葉でもある「Think Bigger」だ。同社が目指すのは、著名人のスタートアップ投資を支援するインフラづくり。目標は高く、夢は大きくという本田らの高い視座から生まれたこのアイデアは、世界初の試みだ。
ビッグマウスなら絶対に投資します
「(XPVを共同創業した)ソーヘルと中西武士は、僕にないものをもっている。僕がやるべきことは、彼らの業界ネットワークを使いながら、前に出てビジョンを語り、人を巻き込んでいくことです」昨年10月のForbes JAPAN Webのインタビューで、本田は自身の役割をこう語っている。しかし、単に壮大なビジョンを伝え、共感を求めているのではない。米国でのスタートアップ投資では、シリコンバレーに存在するインナーサークル(一流のVCたちが情報交換をするコミュニティ)に入り込むことが優良案件をつかみ取るカギとなる。ウィル・スミスはそこへのアクセスをもつひとりで、本田は彼を通じて現地の有力スタートアップにつながり、投資を成功させてきた。