しかし、信頼関係を超えた何かがあれば、たとえ関係性に多少の問題が生じたときでも、その顧客は熱烈な支持者でいてくれるだろう。ここでいう「多少の問題」とは、商品の納品に通常より時間がかかったり、商品が届いたときに具合があったりすることを指している。信頼の先にあるのは、顧客からの深い敬意と惜しみない支持を得ることだ。ひと言でいうなら「称賛」だ。
ブランドへの称賛こそ、究極の顧客コミットメントなのだ。その称賛は、あなたのブランドを自分たちの問題の解決策として認識し、パートナーとして誇りを持てるビジネスであると同時にコミュニティを築くものとして捉える人たちの間で得られる。こうした顧客は、あなたのブランドに対する忠誠心があるだけではない。ブランドを愛してくれているのだ。
称賛は得られずとも信頼を得ることはできるが、信頼なくして称賛を得ることはできない。ブランドを構築しながら、顧客の信頼を得るために投資してきたのであれば、次のステップに進んでみよう。顧客の称賛を得ることで、あなたのブランドの周回軌道にしっかりと引き込むのだ。以下にその方法を紹介する。
1. 力を与える
顧客は、自分の問題を解決してくれる商品やサービスを購入する。ここでガブリエラを例にとろう。彼女は古いキッチンの蛇口を自分で交換したいと思っているのだが、ナットを緩めて取り外すことができない。ちょっとググってみたところ、この作業に必要なのは「シンクレンチ」という道具だとわかった。そこで彼女はAcme(架空のブランド)のシンクレンチを購入した、彼女の目的には適っているように見える。だが、称賛を得るためには、単に解決策を提供するだけでは足りない。それを得るためには、あなたのブランドは、顧客に選択の自由とともに力を与える必要がある。さて、ガブリエラの話に戻ろう。どうやらシンクレンチが思うように使えないようだ。彼女の不満を放置したままにするのではなく、Acmeのウェブサイトには、動画によるチュートリアルが用意されており、それを使ってうまくいく方法を教えてくれる。彼女はナットを緩め、古い蛇口を交換し、自分自身を誇らしく感じ、周りにそれを伝えてくれるだろう。
Acmeは、ガブリエラに必要な道具を提供しただけでなく、その使い方を教えることで、ガブリエラに「力」を与えたのだ。その結果、Acmeは彼女の信頼だけでなく、称賛も得ることができた。多くのことが自分ではコントロールできないこの世界で、顧客に「力」を与えることで、その一部を取り戻させることができる。