国内

2023.03.30

福井の「究極電池」に石油大手サウジアラムコが注目 APB社が量産化し世界へ

全樹脂電池のサンプル品

スマートフォンやノートPC、EV車などに用いられる「リチウムイオン電池」は、重量や体積あたりのエネルギー密度が高いという優れた性能をもつ。しかし、エネルギー密度の高さゆえにショートすると発熱し、発火する危険性がある。また、価格の高さや製造工程で膨大な二酸化炭素を排出するという課題もある。

こうした課題を解決するべく、2018年に誕生したのがリチウムイオン電池の金属部分を樹脂にした「全樹脂電池」だ。従来製品の2倍の体積エネルギー密度であるほか、発火の危険性が低く、素材をリサイクルできるため環境対策にもなる。

開発したのは、福井県に本社を置く「APB」。同社の堀江秀明代表は、EV車「日産リーフ」のバッテリーシステムを開発したエンジニアだ。APBはこれまで88億円の資金を調達しており、2026年の量産化を目指し、福井県内の生産工場で稼働試験を進めている。

そうしたなか、3月27日には、サウジアラビアの国営石油企業「サウジアラムコ」との連携協定締結を発表した。サウジアラビアは現在、脱炭素社会の構築に取り組んでいる。同国は日照率が高く、太陽光発電を行っているが、そのエネルギーを溜めることができないという課題がある。そこで「全樹脂電池」に注目したというわけだ。

今後APBとサウジアラムコは、共同で樹脂素材の技術アップデートや生産体制の強化に取り組み、全樹脂電池の世界展開を始めるという。

文=露原直人

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