取り囲まれた警官から必死に逃れようとするドナルド・トランプ──。前米大統領のそんなショッキングな
画像が先週、ソーシャルメディアに出回り、騒然となった。トランプはポルノ女優ストーミー・ダニエルズへの「口止め料」支払い疑惑をめぐり
起訴される可能性があるが、もちろんこれはフェイク画像である。画像は英調査報道機関ベリングキャットの創設者であるエリオット・ヒギンズが「ミッドジャーニー(Midjourney)」というAI(人工知能)ツールを使って生成し、20日にTwitter(ツイッター)に投稿したものだった。
実際、画像をよく見ると、そこにいる「警官」の制服や帽子の文字は妙にぼやけているし、トランプにはどうやら足が1本余分に生えているようである。ヒギンズは「見た人がトランプの足が3本あることに気づくだろうと見越して」投稿したとAP通信に説明している。
AIを使って生み出した架空の写真や動画は「ディープフェイク」と呼ばれ、これまでにテイラー・スウィフトやスカーレット・ヨハンソンら
女性歌手や女優の顔を合成したポルノ動画が問題になったほか、2018年には
バラク・オバマ元米大統領がトランプをののしるフェイク動画が拡散するなど政治家も被害に遭ってきた。
Meta(メタ)やツイッター、TikTok(ティックトック)といったソーシャルメディア各社はプラットフォームでディープフェイクを禁止しているが、発見にてこずっているうちに拡散してしまうことも少なくない。だが、ヒギンズが例示してみせたようにディープフェイクと本物を見分けるコツもある。
トランプ本人が最近シェアしたフェイク画像を題材にしてみよう。トランプが23日に自身のソーシャルメディア「Truth Social(トゥルース・ソーシャル)」に投稿したこの画像では、トランプとおぼしき人物が部屋の真ん中でひざまずき、両手を組んで祈っている。彼には光が直接当たっている。