次に、2019年12月にYouTube(ユーチューブ)に投稿された動画を検証してみよう。動画のなかでトランプは、自身に対する弾がい手続きの動きを「政治的魔女狩り」と呼んで批判し始める。が、それはすぐにジェフリー・エプスタインは自殺したのではないという主張にすり替わる(性的人身売買などの罪で起訴されたエプスタインはその年の8月、勾留中に独房で死んでいるのが見つかり、ニューヨークの検視当局はベッドシーツで首を吊って自殺したと断定している)。
この動画には、ディープフェイクであることを示すはっきりとした印がいくつかある。1つは、トランプの口の動きが発音と合っていないことだ。動画中のトランプは言葉の端々で「th」の口の形をしているが、音とずれている。また、トランプの髪との境界あたりの背景も少し不自然な感じがする。
トランプが2020年5月にリツートした動画では、映画『インデペンデンス・デイ』でビル・プルマン演じる米大統領が演説する有名なシーンが、顔だけトランプにすげ替えられたものになっている。オリジナルの音声が流れるなか、宇宙人との最終決戦に備える兵士らの顔も、トランプの娘のイヴァンカ・トランプや共和党上院議員のテッド・クルーズ、FOXニュース司会者のショーン・ハニティーに変わっている。ただ、この動画はトランプの顔がプルマンの胴体の上にのせられただけなのがひと目でわかるため、つくり物だというのはわかりやすいだろう。