政治

2023.03.26

ロシア、同盟国ベラルーシに核兵器を配備へ ソ連崩壊後初

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)とベラルーシの盟友アレクサンドル・ルカシェンコ大統領(Getty Images)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は25日、核兵器の一部を同盟国ベラルーシに配備すると発表した。ロシアが国外に核兵器を配備するのはソビエト連邦崩壊後初めてで、30年以上ぶりとなる。

複数の報道によると、プーチンは露国営テレビが放映したインタビューで、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領からの要請に応じ、同国に戦術核兵器を保管することで合意に達したと明らかにした。その上で、7月1日までにベラルーシ国内で核兵器の保管施設の建設を完了させるが、核弾頭の譲渡は「核兵器の不拡散に関する私たちの国際的義務」に違反しないと強調した。

ロシア当局者が核紛争の可能性を示唆するなど、欧米との緊張が高まる中、プーチンは「米国は何十年も前から同じことをしてきた」と指摘。核兵器をベラルーシに移すという決定は「何も特別なことではない」と説明した。北大西洋条約機構(NATO)によると、米国はNATO加盟国として核弾頭を欧州に保管しているが、同国が国外に核弾頭を送った時期については不明。

プーチンは先月、2011年に発効した米国との核軍縮条約「新戦略兵器削減条約(新START)」に定められたロシアの履行義務を一時停止し、核兵器の展開を拡大すると宣言していた。これに対し、米国のジョー・バイデン大統領は、ロシアの新START履行停止表明を「大きな間違い」だと非難しつつも、同国が核兵器を使用するとは「解釈していない」と述べていた。

米シンクタンク「全米科学者連盟(FAS)」の推計によると、米国の5428発に対し、ロシアは5977発の核弾頭を保有している。ソ連は1991年の崩壊時点で3万5000~4万5000発の核弾頭を保有していたと推定されている。うち3200発がソ連構成国だったウクライナ、カザフスタン、ベラルーシに配備されていたが、翌年には取り除かれた。

ロシアが1年前にウクライナに侵攻して以降、同国と欧米諸国との関係は悪化の一途をたどっている。核弾頭をベラルーシに移すという今回の決定は、ウクライナの子どもたちを違法にロシアに連行したとして、国際刑事裁判所(ICC)が先週、プーチンへの逮捕状を出したことを受けたもの。ロシアはICCの決定を非難し、同裁判所の管轄権を認めていないと主張している。

ロシア安全保障会議の副議長を務めるドミトリー・メドベージェフ前大統領は今週初め、ウクライナへの支援は「核の大惨事を近づける」ものだと警告。ロシアの「西側との関係はすでに歴史上ないほど悪化している」と述べた。

中国の戴兵国連次席大使が国連総会で「核兵器が使用されることがあってはならない、核戦争を引き起こしてはならない」と訴えるなど、ロシアがウクライナとの紛争で核兵器を使用する可能性については以前から指摘されていた。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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