最も危険な「真菌類」、WHOが優先順位リストを発表

平板培養された真菌「カンジダ・アルビカンス」(Getty Images)

先にCDC(米国疾病管理予防センター)の研究チームが発表した、ある致死的な真菌が米国全土に蔓延していることに関する警告には、おそらく読者が聞いたことのないさまざまな菌類病原体が、世界中で新たな健康の脅威となっていることが強調されている。 

3月20日、CDCは侵襲的酵母様真菌「カンジダ・アウリス」が過去数年間に驚くべき速度で全米に広まっていると警告した。Annals of Internal Medicineの報告による。

真菌感染症に罹患する可能性が高いのは、高齢者、危篤患者および免疫障害のある人々だと、米国国立生物工学情報センター(NCBI)の報告書では述べられている。

NCBIによると、真菌感染症の死亡率は結核、マラリアなどの疾病と同程度だ。

世界保健機関(WHO)によると、真菌感染症は世界的な健康の脅威となりつつあるにも関わらず、他の疾病と比べて十分な資源が投入されていない。

WHOは、真菌感染症に関する研究開発の遅れを補うべく、真菌病原体の優先順位を決める一手段として真菌優先病原体リストをまとめた。

最も研究が必要とされている危険な菌類病原体

WHOは、さらなる研究が最も必要な11種の真菌を挙げ、最初の4つを重要な優先度、残りの7つを高い優先度とした。

クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans):全世界に分布し、自然界(土壌、腐敗樹木)に見られる病原性酵母。肺、中枢神経系および血液に作用するクリプトコックス症などの疾病を引き起こすことがある。死亡率は41%~61%(重要な優先度)

・カンジダ・アウリス(Candida auris):全世界に分布する病原性酵母。心臓、血液、中枢神経系、目、骨および内蔵に作用する真菌感染症である侵襲性カンジダ症を引き起こすことがある。死亡率は20%~53%(重要な優先度)

・アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus):全世界に分布する環境カビ。侵襲性アスペルギルス感染症(IA)を引き起こすことがある、主に呼吸器系で発症するが、中枢神経系など他の臓器にも感染する場合がある。抗真菌剤耐性のあるIAの死亡率は47%~88%(重要な優先度)

・カンジダ・アルビカンス(Candida albicans):全世界に分布する病原性酵母で、通常はヒト微生物叢の一部だが、侵襲性カンジダ症などの感染症を引き起こすことがある。死亡率は20%~50%(重要な優先度)

・ナカセオミセス・グラブラータ(Nakaseomyces glabrata):全世界に分布する病原性共生酵母で、侵襲性カンジダ症などの感染症を引き起こすことがある。死亡率は20%~50%(高い優先度)

・ヒストプラズマ属(Histoplasma spp.):全世界に分布する二形性の真菌で、自然界(土壌、鳥類およびコウモリの糞)および酵母様形態でヒトに存在する。免疫障害のある患者に作用するヒストプラスマ症を引き起こすことがある。HIV・AIDS患者における死亡率は21%~53%(高い優先度)
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翻訳=高橋信夫

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