最も危険な「真菌類」、WHOが優先順位リストを発表

平板培養された真菌「カンジダ・アルビカンス」(Getty Images)

・ユーマイセトーマ原因物質(Eumycetoma causative agents):ユーマイセトーマ症は、土壌および水中に見られる真菌に起因する深部組織感染症で。 手足切断のリスクは最大39%で、患者の60%~80%が日常生活に著しい影響を受けたと報告しているが、全体の死亡率は低いと考えられている(高い優先度)

・ケカビ目(Mucorales):全世界に分布する病原性カビの大きなグループで、胞子を吸入した患者に作用して、ムコール症などの感染症を引き起こすことがあり、肺 や鼻腔に影響を与えるほか、目、中枢神経系および消化管を通じて感染する場合もある。成人における死亡率は23%~80%(高い優先度)

・フザリウム属(Fusarium spp.):病原性カビの種類で、熱帯地域に多く見られるが、全世界に分布しており、侵襲性フザリオ症を引き起こすことがある。主として呼吸器系と目に影響を与えるが、他の臓器や中枢神経系にも広がる可能性がある。死亡率は43%~67%(高い優先度)

・カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis):全世界に分布する共生酵母で、ヒトおよび動物の微生物叢に多く見られ、通常の健康状態では害を与えないが、侵襲性カンジダ症などの感染症を引き起こすことがあり、その場合の成人死亡率は55%~60%(高い優先度)

・カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis):全世界に分布する共生酵母で、ヒトおよび 動物の微生物叢に多く見られる。通常の健康状態では害を与えないが、危篤状態および免疫不全の患者では特に、侵襲性カンジダ症などの感染症を引き起こすことがあり、関連する死亡率は20%~45%(高い優先度)

NCBIによると、全世界で1億5000万例以上の重篤な真菌感染症が報告されている。年間約170万人の死亡が、真菌感染症に関連している。高リスク患者に用いられる抗真菌剤によって、一部の真菌が耐性を獲得し、その結果生まれた多剤耐性真菌の中にはカンジダ・アウリスをはじめとするより致死性の高い真菌病原体が含まれている。

真菌に対する世間の関心は、ビデオゲームをベースにしたHBO Maxのドラマ『The Last Of Us』のヒットとともに高まった。そこに出てくる感染症は、ノムシタケという寄生菌類によって起きるが、現実には、ノムシタケは主に昆虫の間に蔓延し、ヒトがそのような状況に直面する可能性は極めて低いと専門家はいう。

「もしそんな菌が病院に侵入したら、コントロールして排除することは非常に困難です」とヴァンダービルト大学医療センター感染症部門のウィリアム・シャフナー教授がワシントン・ポストに話した。「菌は根強く残ってくすぶり続け、感染対策チームや病院内の全員が最善の努力を払っても、かなりの期間感染症を引き起こすでしょう」

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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