ゼロイチはライブの快感に匹敵する。VERBALが語る「最高の働き方」

アーティスト、AMBUSH(R) CEOのVERBAL

Forbes JAPAN 2023年5月号』は、「最高の働き方を探せ!」をテーマに、個人と組織の新しい働き方を大特集。カバーストーリーは、ミュージシャンとして、ファッションブランドAMBUSH(R)のCEOとして、多彩に活躍するVERBALの特別インタビューした。ファッション・アート・テクノロジー・ビジネスを掛け合わせて、最先端で挑戦を続けている彼の働き方とは。


2023年2月23日、VERBALはパリに向かう機上の人となっていた。m-floやTERIYAKI BOYZといった音楽ユニットで活躍するVERBALは海外で公演する機会も多い。しかし、今回のパリ行きは音楽活動のためではない。目的はNFT界最大のイベント「NFT Paris」。トークセッションにAMBUSHのCEOとして登壇するのだ。

AMBUSHは、売上の70%が海外というグローバルファッションブランド。22年2月には初のNFTアイテムとして指輪を発売し限定2022個は2分で完売。さらに3月にメタバース空間「AMBUSH SILVER FCTRY」を開設し、6月にはメタバースと現実世界の両方で着用できるスニーカーを展開するなど、新しい試みを続けている。

アートとテック、そしてビジネスのクロスポイントに立つVERBALだが、アーティストの枠を越えて活動するのはこれが初めてではない。


日本初のモーションキャプチャースーツを使ったパフォーマンスのために、2体のスーツを自身で購入し、海外から4人のマニピュレーターを雇ったこともある。2013年末からステージなどで披露していたが未使用時にはレンタル事業を始めた。

「単純に面白いことをやりたいだけ。ただ、新しいことは誰かがお膳立てしてくれるわけじゃない。自分で勉強するし、必要なら人やお金を集めてビジネスにもします」

メタバースもVR空間でライブをしたいという好奇心から始まった。当初は周囲の反応が薄くて実現しなかったが、コロナ禍で流れが変わり、21年にクリエイティブユニットPKCZのメンバーとして初のVRライブ開催に漕ぎつけた。ただ、このときは失敗だったという。

「自分の熱量は5000%。でも実際にメタバース空間にまでたどり着けたお客さんは2人しかいなかった(笑)。音楽ファンはテッキーな人ばかりではない。僕たちが表現したいことを体験してもらうには、もっとフレンドリーなオンボーディングが必要だと反省。この教訓は次のメタバースにも活かしています」

当時、VERBALの関心をひいたものがもう一つある。21年、NFTブランド「RTFKT」でスニーカーを購入したのを機にNFTに夢中になったのだ。ユーザーとしてハマるうちに、AMBUSHでも活用できると気づく。

「ファッションには、同じ趣味の人を見分けるソーシャルシグナリングの効果もある。AMBUSHはYOONがつくったアクセサリーを友達にあげているうちにコミュニティができてブランドになった。同じようにNFTを好きなものとつながるアクセスパスにできればおもしろいなと」

 NFTやメタバースのリリースに向けて開設したDiscordの公式チャンネルでは、ユーザーの反応に戸惑った。投機目的やエアドロップ目当ての人が少なくなかったからだ。ただ、「店舗に並ばないで新商品を買える権利が欲しい」という声も届いた。ロイヤリティが高いユーザーにとって、NFTはまさにアクセスパスになりうる。実際、アクセスパスの機能を持たせると取引量は増加した。

去年は実験的なケースを積み上げた1年だったが、今後は「フィジカルな場所とつなげて、よりすごいサービスやお買い物体験を追求したい」と明かす。
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文=村上 敬 写真=帆足宗洋(オーガスト) スタイリング=渡辺康裕 ヘアメイク=高草木 剛

この記事は 「Forbes JAPAN 「 最高の働き方」を探せ!CREATE THE WAY YOU WORK」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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