政治

2023.03.22

弾薬不足のウクライナ軍、バフムートで慎重にロシア軍を攻撃

Getty Images

ウクライナ東部の要衝バフムートの南北で戦闘が激化している。ロシア軍の連隊は時間、そして衰えつつある戦闘力をにらみながら廃墟と化したバフムートを包囲し、ウクライナ軍の守備隊を突破しようと必死だ。

一方、ウクライナ軍はバフムートの最も防御しやすい場所に陣取っている。重砲の在庫が少なく、できるだけ少ない武器で多くのロシア軍の兵士を殺すべく、慎重に標的を選んでいる。

東部ドンバス地方ドネツク州の最前線となっているバフムートの戦前の人口は7万人。この地で貴重な軍事資源を最も効率的に活用し、最終的に勝利を収めるのはどちらなのか。

3月19日かそれより前に行われた、バフムートのすぐ北に位置するヤヒドネのロシア軍の哨戒基地への目覚ましい襲撃は、ウクライナ軍が攻撃を精選していることを強調している。ウクライナ軍第93機械化旅団のドローンが監視する中、強力な弾薬(おそらくM30/31ロケット弾の一斉発射か翼のある滑空爆弾)がロシア軍兵士がちょうど離れようとしていた多層ビルを粉砕した。

昨春以来、ロシア軍と分離独立派、そして民間軍事会社ワグネルグループの傭兵はバフムートの掌握を試みているが、今のところ失敗している。米統合参謀本部議長のマーク・ミリー陸軍大将は3月15日に「バフムート市内やその周辺で激しい戦闘があり、ロシア軍はわずかに戦術的前進をしているが、大きな犠牲を伴っている」と記者団に述べた

ロシア大統領府は、バフムートを掌握すればロシア軍と同盟軍が西と北に前進してドンバス制圧を拡大する道が開けると考えているようだ。ウクライナ軍参謀本部にとってバフムートは今後あり得る反撃を前に敵を弱体化させる好機だ。

バフムート周辺では数万人のロシア軍と同盟軍の兵士が死傷している可能性がある。この1年の大半で、ウクライナの死傷者はもっと少なかったようだ。

2月の最終週にロシア軍がバフムートの東、北、南に進攻すると、ロシア軍とウクライナ軍の損失はいくらか同等になったようだった。米シンクタンクの外交政策研究所のアナリスト、ロブ・リーは「ロシアがまず1月に南側を、2月中旬〜下旬に北側を占領して高地部分を制圧するにつれ、損失の比率は変化した」と指摘している

バフムート北西部に位置し、戦前の人口はわずか300人だったヤヒドネ村は2月25日にワグネル軍に掌握された。ヤヒドネの高台を獲得し、さらに西側に陣取っているロシア軍は、西側からバフムートに入る2つの主要ルートのうち北を通る0506号線を直接攻撃できる。

T0506号線は、ウクライナ軍がバフムートへの人や物資の移動に利用できる2本の舗装道路のうちの1本だ。南側のT0504号線はロシア軍の直接照準射撃兵器の射程圏内に入っている。ロシア軍は2月下旬か3月上旬に、バフムート近くの0504号線を一時的に押さえていたかもしれないが、ウクライナ軍の反撃で後退した。
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翻訳=溝口慈子

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