政治

2023.03.22

弾薬不足のウクライナ軍、バフムートで慎重にロシア軍を攻撃

Getty Images

これらの地域と道路をめぐる戦いはバフムートの長く血なまぐさい戦いを支える2つの支点だ。ウクライナ軍がここ数日、保有する中で最も優れている兵器をヤヒドネにある建物に向けているようなのはそのためだ。

おそらく、苦渋の選択だったのだろう。バフムートの戦いではウクライナ軍、ロシア軍ともに砲弾やその他の弾薬が不足している。しかし弾薬不足はウクライナ側でより深刻なようだ。ウクライナ軍の旅団司令官の1人は「砲弾が壊滅的に不足している」と語った。一発一発が大事だ。

ウクライナ軍がどの兵器でヤヒドネの建物を狙ったかはまったく不明だ。親ウクライナ派の情報筋の一部は、その兵器は米国が最近ウクライナに供与した、翼が付いたGPS誘導式の統合直接攻撃弾(JDAM)の1つで、ウクライナ空軍はそれを旧ソ連製の古い戦闘機に装着したと考えている。

射程距離が延びた長距離誘導爆弾(JDAM-ER)はウクライナで最も強力な長距離の空中兵器だ。翼があるため、翼のない爆弾に比べて射程距離が長い。

ウクライナ軍のパイロットはロシア軍の防空網を避けるために木の高さほどで飛行し、最後の瞬間に角度を変えて長距離誘導爆弾を5〜10マイル(約8〜16キロ)先、あるいは高度と速度によってはさらに遠くの標的に発射することができる。米国防総省のローラ・クーパー副次官補は1月に「これはウクライナが保有する航空機を可能な限り効果的なものにするための、我々の取り組みの最新のものに過ぎない」と記者団に語った

レーダー信管を搭載した統合直接攻撃弾は地上20フィート(約6メートル)で爆発し、真下の建物を破壊する可能性がある。バフムート中心部の多くの建物には要塞のような戦闘態勢をとれる地下があるが、バフムート郊外にある建物には地下がないとリーは指摘する。そのため、そうした建物やその中に避難している部隊は特に統合直接攻撃弾に対して脆弱だ。

ウクライナが統合直接攻撃弾を何発保有しているかは明らかではない。在欧米空軍司令官のジェームズ・ヘッカー空軍大将は2週間前、ウクライナ軍は「2、3回の攻撃を行うのに十分な攻撃弾を持っている」と記者団に語った。

その後ウクライナ軍の統合直接攻撃弾の在庫は増えたかもしれないが、精密爆弾はまだ不足している可能性が高い。ウクライナ軍がバフムート近郊の建物を精密爆弾で狙った可能性もあり、これは同市の重要性を強調している。犠牲者が増え、物資が不足する中でも、1年以上続くこの戦争の両陣営はバフムートで勝利を収めようと懸命になっている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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