「1万ドル燃やして2万ドルを手に入れる」世界一稼ぐYouTuberの錬金術

ミスタービースト

Forbes JAPAN 2023年5月号』は、「最高の働き方を探せ!」をテーマに、個人と組織の新しい働き方を大特集。2021年に62億円を稼ぎ出し、もっともビリオネアに近いYouTuberと飛ばれるミスタービースト。絶大な知名度を使ってリアルのハンバーガー店舗やお菓子のブランドも展開し、大きな収入源としている。米国のクリエイター・ビジネスの最先端を走るミスタービーストの仕事観とは。


甘いマスクの24歳のYouTuber、ジミー・ドナルドソンは、紫のベルベットのトップコート、特大の金のちょうネクタイ、オレンジのトップハットのいで立ちで、映画『チャーリーとチョコレート工場』の登場人物ウィリー・ウォンカに扮している。ミスタービーストとして知られる身長193cmのクリエイターは、昨年冬に立ち上げたチョコレートバーのブランド「フィースタブルズ」のプロモーションビデオを制作しているところだ。
 
彼は、「ミスタービースト・バー」の懸賞に当選した10人のファンを、ノースカロライナ州東部の倉庫に招待していた。なかには、本物のチョコレートの流れる川が再現された、偽のチョコレート工場がある。ここで繰り広げられるのは、勝ち抜きゲームだ。白いマシュマロの敷かれた部屋では、当選者がキャンディの回転台の上に立って、倒れたら負けのゲームに挑む。優勝者は50万ドルと新車を獲得することができるのだ。

こんなおふざけ動画だが、再生回数は、過去6カ月で1億2100万回に到達した。メインの「ミスタービースト」に至っては、それを数千回上回る。メインチャンネルの登録者数は、1億1200万人を記録した。
 
動画は「ミスタービースト、10万まで数える」、「ミスタービースト、棺に50時間生き埋めになる」といった本人が挑戦する破天荒なストーリーが売りだ。加えて、「レーザーアラーム装置で警備された倉庫からダイヤモンドを盗む」、「畑に描いた円の中に100日間滞留する」といったおふざけに1万〜100万ドルの懸賞金が提供される、型破りな企画も人気を集めている。
 
また、競争の激しいこの業界では珍しいことに、ライバルとの協業もする。2022年11月には、YouTuberのトップになったことを記念して、レーザービーム(登録者数2020万人)、ジョージノットファウンド(1050万人)、カリュー(400万人)など11人のYouTuber仲間を誘い、250万ドルのプライベートジェットを懸けて、飛行機を長く触り続ける耐久ゲームに挑戦、動画を公開した。
 
制作には、通常150万〜300万ドルの予算をかける。そのため、大金が湯水のように流れて出て行く。が、YouTube、TikTok、 Facebookのおかげで、それ以上の大金が入ってくる。

「考え方はシンプルですよ。稼いだ1万ドルに火を付けて燃やせば、2万ドルになる。自分がいるのは、そういう世界なんです」
 
入ってくる大金は、2021年の収入でいえば、自身の12以上のチャンネルの広告で3200万ドル、スポンサー付きコンテンツの900万ドルを含めて、5400万ドルに達した。彼の収入は、ほかのソーシャルメディアクリエイターを軒並み押さえ、最高額に達した。2022年度は1億1000万ドルに倍増する見込みだ。

また、スタジオの単独オーナーとして、わずかな株式の売却を検討している。彼がその気になれば、10%の売却で取引額は1億5000万ドルになる可能性がある。そうなれば、スタジオの価値は15億ドルに上り、ドナルドソンは世界初の億万長者YouTuberとなるだろう。彼の現時点の総資産は推定5億ドルだ。
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文=クロエ・ソルヴィノ 写真=イーサン・パインズ 編集、翻訳=中沢弘子

この記事は 「Forbes JAPAN 「 最高の働き方」を探せ!CREATE THE WAY YOU WORK」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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