学生とのコラボで可能性が広がる
2022年3月には、「Rakuten Fashion Week TOKYO 2022A/W」に参加。廃棄漁網をリサイクルした生地でつくった漁師向けウェアに加え、一般向けのドレスやワンピース、ジャケットなどを披露した。その際に実施したタレントとの対談などで「若者はサステナビリティに関心が高いものの、何をすればいいかわからない人が多い」と聞いたことから、9月には文化学園の学生と連携。学生から漁網のリサイクル生地を使ったデザインを募集し、審査会を行った。60~70件ほどの応募の中で、1位に輝いたのはウエディングドレスだ。
「まさか廃棄漁網がウェディングドレスになるなんて、と驚きました。アップサイクルをすることでさらに価値を高めるというストーリーも伝わってくる作品で、満場一致でした」
作品は、渋谷ヒカリエで同月開催の「Rakuten Fashion Week TOKYO 2023S/S」にて展示。展示物の演出では、東京藝術大学の学生が協力してくれた。
来場者の反応は上々で、海をきれいにする、環境を良くするための取り組みであるということに、応援や賞賛の声が集まった。
漁師に還元できる仕組みも
DAIWAとD-VECでは、この漁網アップサイクル製品を漁師向け、釣り人向け、一般向けと3ラインで展開する予定。まず3月には、漁師向けのウェアが第一弾として発表された。漁師向けのウェアは、現役の漁師にヒアリングをしたうえで、DAIWAの透湿防水や軽量化の技術、おしゃれなデザインなどを生かして制作。廃棄漁網の回収に協力した漁師には、ほぼ利益なしで提供することで、アップサイクルへの貢献実感を得てもらう狙いもある。
「デザインにもこだわったので、“父親世代が着ているようなものが嫌だ”という若い世代を中心にとても好評です。ほぼ原価とはいえ、リサイクル品のため従来のウェアに比べると割高ですが、『これくらいなら買いたい』と言っていただいています」
5月頃には釣具店向け、6月頃には一般のアパレル販売向けの商品を発表予定。学生との産学連携により生まれたウェディングドレスも今春中には商品化する予定だ。
一般向けの商品には、D-VECとしてTシャツやワンピース、コートなどがラインナップとして並ぶ。価格帯は通常の商品よりもやや上がるが、まずはサステナビリティに関心の高い層からアプローチする。
「売らんがためというよりは、啓蒙活動の一環として取り組んでいます。多くの人に知ってもらうことで大量に生産・販売できるようにすれば、コストが下がるので販売価格も下げられる。それだけ多くの廃棄漁網がリサイクルできるようにもなります。ニーズが高まり、地球がきれいになっていく。この循環を永遠に回していける仕組みにしていきたいです」