宇宙

2023.03.16

北海道から宇宙開発を目指す、東海大の学生が小型ロケット打ち上げに成功

プレスリリースより

東海大学の学生が開発した小型試験ロケットが北海道大樹町のスペースポートから打ち上げられ、実験の目標を達成しました。全長2メートルの小さなロケットで、飛行は高度400メートル程度と短いものでしたが、そこにはこれからの日本のロケット開発にとって重要な意味が感じられます。

宇宙技術者の養成を目的として1995年に設立された東海大学学生ロケットプロジェクトは、2003年からは北海道大樹町のスペースポートで、2005年からは秋田県能代市を加え、年2回、ロケット打ち上げ実験を行ってきました。コロナ禍のために4年間のブランクがあり、今回は5年ぶりの実施となりました。

今回の実験の目的は、確実な打ち上げとロケット回収後の解析、さらに数年後に予定している超音速機のための技術実証、高度100キロメートル以上を目指す機体の開発方針を明確にすることです。

結果は、エンジンが予定どおりに燃焼し、打ち上げ9.32秒で高度416.45メートルに達し、パラシュートを開いて打ち上げ地点の北北東440メートルの地点に着地。機体は無事に回収できました。

使用されたロケット「H-57」は、固体燃料と液体の酸化剤を使うハイブリッドロケットという比較的安全なタイプで、エンジン「THR」シリーズは2005年に独自開発したものです。固体燃料にはワックス、推進剤には液化亜酸化窒素を使い、推力は660ニュートン。プロジェクトには、その上の1キロニュートン級、2キロニュートン級のエンジンもあり、57回の打ち上げ実績を誇ります。

機体には、コストダウンと再利用を考慮した工夫が各所に盛り込まれています。たとえば、このクラスのロケットではノーズコーンの分離は火薬で爆破させて行うのが普通ですが、東海大学のロケットは火薬を使わないバネ式で、分離機構は再利用が可能になっています。前回の打ち上げではノーズコーンが脱落してロケットが空中分解してしまったため、今回は強度を高めた改良版が使われました。機体はモジュール式で、部品の再利用やミッションに応じた組み替えが可能です。

現在、同プロジェクトは、中期目標として高度10キロメートルを目指すロケットの開発計画を策定中とのことです。「限られたリソースをもって最短で目標を達する」ために、必要な技術を洗い出し、開発時間を見積もるとしています。日本の商用大型ロケット開発はH3の打ち上げ失敗で大きくつまづいてしまいましたが、こうした民間の地道にして工夫に富む、迅速な開発力に大きく期待したいところです。北海道スペースポートのような、学生プロジェクトにも使いやすい実験場もまた、こうした活動の大きな推進力となるでしょう。ロケット開発の足下は、着実に固まってきています。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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