VC

2023.03.22

元ソニーCEO出井伸之の思い受け継ぐ独立系VC 2号ファンド設立へ

クオンタムリープベンチャーズの古谷健太郎(中央)、中澤篤(右)、諏訪博俊(左)

2022年は日本のスタートアップ業界にとって困難な年であった。国内のIPO企業数は、過去最高であった2021年と比較して大幅に減少し、9社が上場申請を取り下げた。

資金調達額も減少するなど難しい状況下にあるなか、創業/プレシード期の起業家を支援するクオンタムリープベンチャーズは3月22日、2号ファンドの設立を発表した。

同社は、元ソニーCEOであり、昨年6月に亡くなった出井伸之が創業したクオンタムリープからスピンアウトする形で誕生した独立系ベンチャーキャピタル(VC)だ。2019年に古谷健太郎が独立創業し、2020年に総額10.2億円の1号ファンドを設立。これまで21社に全社リードとして投資してきた。

今回の2号ファンドでは新たにVC経験が豊富な中澤篤と諏訪博俊がGPとして加わり、総額50億円を60社程度に投資することを目指す。

代表の古谷は「その人が持つビジョンに鳥肌が立つ、奇跡を起こせそうな起業家」に投資したいと語る。特にシードのスタートアップは、ピボット(事業転換)することも珍しくないため、事業内容より人(起業家)に投資するという考えだ。

他のVCと異なる点は大きく2つある。1つ目は、レガシーな大手企業出身の起業家を積極的に支援することだ。日本では大企業にリソースが集中しているが、そこにスピード感を持ってゼロイチで事業を生み出すノウハウを掛け合わせることで、ユニコーン企業の創出に繋がると考えている。

なお、経済産業省が推進する出向起業の認定アクセラレーターとしてもこれまで3期連続で採択されている。

2つ目はエンジニアリング支援だ。プロダクト開発をサポートするエンジニアが非常勤で在籍しており、投資先のスタートアップにテックメンタリングを実施している。創業期の事業立ち上げにおいてボトルネックとなる開発まわりの支援に力を入れている。

出井の思いが詰まったバースデーカード

このVCで欠かすことができないのが、元ソニーCEOの出井伸之の存在だ。

代表の古谷はクオンタムリープに参画後、出井のアシスタントとして国内外の出張や面談に同席するなど密度の濃い時間を共にした。

出井は、自分とは異なった経験を持つ古谷を50歳も歳の差がありながら評価していた。33歳のバースデーカードで祝福する出井の言葉からもその思いをうかがうことができる。

古谷健太郎(左)と出井伸之(右)

古谷健太郎(左)と出井伸之(右)


出井の「視座を高く持ち、結果を求める意識」は強く引き継がれている。
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文=川原万宙

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