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2023.03.16 10:30

「あの夏を取り戻せ」、コロナで中止した甲子園が元・高校球児の情熱で開催へ

(写真:大武優斗氏(本人ご提供))

写真:大武優斗氏(本人ご提供)


そして、これからいよいよ甲子園へ向けて!という最中に世界的なコロナ感染拡大により、甲子園の開催中止を余儀なくされてしまった。突然、夢が打ち砕かれた大武。甲子園が無くなったのは、誰のせいでもないと頭では理解していたものの、モヤモヤした思いは残るばかり。

「野球という目標を失い、一時はセミの抜け殻のように無気力な日々を過ごしていました。今だから言えますが、何度も『死にたい』とか『何の為に、これまで自分は生きてきたのだろうか』と考えた事か。そんな時に、指定校推薦枠で、武蔵野大学に新設されるアントレプレナーシップ学部の存在を知りました。このままでは、自分の行き場がなくなると思い、野球から一旦離れてみようと考えました。そして、父と同じ『自営業』の道に進む決意をかためたのです」

2021年4月、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部に入学。ところが、授業で起業についての学びを深めれば深めるほど、自分が何をしたいか分からなくなっていく悩みに直面してしまった。とはいえ、学部生の誰よりも早く「合同会社VEL」を起業したのは、「夢を失い、一時は死を考えるほど落ち込んでいた僕でも、会社を設立して、夢を再び追いかける」というメッセージを高校時代、共に闘った野球仲間に対して、ごくごく普通の大学生の自分が、身を持って伝えたかったから。

(右:大武優斗氏(本人ご提供))

右:大武優斗氏(本人ご提供)


甲子園を目指した仲間の中には、ちゃんと第二の人生を歩み始めた者もいれば、今でもどん底の精神状態でくすぶっている者もいる。

「当時の野球仲間と久しぶりに再会すると、必ず甲子園の話題になります。そこで、どこか置き去りにされた僕らの『青春』と『あの夏』を何とか取り戻したいという思いが募りました。心機一転して入学した大学でしたが、これまで野球一筋の生活を送っていたので、とりわけ学業に優れていたわけでもない普通の学生である僕が、同世代の仲間に向けて何かメッセージを伝えたかったのです。そこで、『再び立ち上がろう!あの夏を僕たちだけで取り戻そう!』という甲子園へ行けなかった元・野球球児の野球大会を開催するプロジェクトを立ち上げました」

クラウドファンディングの開始も

そこで、当時の全国元高校野球チーム計49校、総勢約1000人に呼びかけて始動したのが「あの夏を取り戻せ 全国元高校球児 野球大会2020-2023」。2022年8月にメディア向け取材を開始し、ホームページを開設→9月には、代表者会議がスタート→2023年6月よりクラウドファンディングが開始予定→そして、11月29日に甲子園球場での開催が予定されている。



全てを大会資金と全国の野球チームに還元する、非営利目的として開催する事を決意した大武の熱意に賛同したのは、7人の代表者による実行委員会と49チームの元高校野球選手達の代表者会。資金は、手探りながら、クラウドファンディングで調達する予定だ。
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文=中村麻美

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