そして、「テクノロジー・アウト」の視点は、餅は餅屋で外部の専門家とうまく連携すればいいと思います。テクノロジーが新しければ新しいほど、自分たちも学び、中で保有しなければならないと思い込みがちですが、新しいテクノロジーは本質的なものから、有象無象まで、数多く出てきます。自前主義的に全てを自分たちでやっていくのは、大企業といえども無理があります。
吉川:大企業だからこそすでにある顧客とのタッチポイントをフル活用してマーケットに真摯に向き合うということですね。まさに原点に立ち戻るべきだと。
一方で、思考が同じパターンに陥らないように、Web3的な感覚を身につけることも重要ではないかなと思います。例えばインターネットが登場した時に、全くインターネットを体感したことがない人が、インターネットでどんな問題を解決できるかを想像することが難しいのと同じように、Web3を肌感覚で理解できていないと、従来の思考パターンで停滞してしまうリスクがあります。
よく、暗号資産をとりあえず買ってそこでWeb3を体験した気になってしまう人が多いですが、それは入り口に過ぎず、そこから何ができるのかを自分自身で模索したり、エキスパートに導かれながら体感してみることが重要ではないかなと思います。
例えば、ノンカストディアル(自己管理型)のウォレット間で送金をして、その情報がどのようにブロックチェーンに書き込まれるかを確認してみたり、自分でNFTをミンティングしてみたり、パーミッションレスな世界だからこそ自分でやろうと思えば色んなことができてしまうので、そこから「Web3的な勘」を得ることも重要ではないかなと思います。机上の空論だけに陥らないように。
高宮:そうですね、それができれば越したことはないけど、現状のUI/UXがマス向けになっておらず、先進的なユーザのみが使いこなせるものになってしまっているので、それが逆に思考のイマジネーションを制限してしまわないように気をつけた方がいいですね。
技術は急スピードで進化していくので、この先、数年後にどのように技術が進化していくのかを誘導してくれる水先案内人的な専門家と対話を続けることは、特に経営層にとっては重要だと思います。
吉川:おっしゃる通りですね。ところで、今後Web3がマスアダプションされていくにあたって、Web3業界で多くの人材が必要となるので、従来型の産業からキャリアチェンジする人も多くなってくるのではないかと思います。実際、シリコンバレーでもWeb2業界からWeb3業界への人材流入がますます活発になってきています。