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2023.03.15

Web3ビジネスに参入する前に知っておくべきこと(前編)

グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーの高宮慎一(左)と、筆者(右)Courtesy of the Author

2022年から日本の大企業が相次いでWeb3ビジネスへの参入を発表し、Web3ビジネスへの関心が日増しに高まっている。一部Web3への懐疑論もみられる中、FOMO(取り残されることへの恐れ:Fear of Missing Out)を感じて「とりあえず」Web3ビジネスを検討し始める企業も多いようだ。

今回は、「Forbes JAPAN」が選出する、2019年版「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」で第1位に選ばれたグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)代表パートナーを務める高宮慎一さんをお招きして、日本企業がWeb3ビジネスの立ち上げを考える上で知っておくべきことついて議論した。


吉川絵美(以下、吉川):高宮さんは最近GCPでWeb3ビジネスも見ていらっしゃるようですね。Web3系スタートアップに加えて、Web3ビジネスに参入したい大企業とも日々接触しているかと思いますが、現状をどうみていますか?

高宮慎一(以下、高宮):Web3以前は「テクノロジー・アウト」的な思考が強かったブロックチェーン業界が「Web3」にリブランディングされ、「マーケット・イン」的な思考、つまりマーケットのニーズや実需から逆算して考えようという動きが台頭してきたように感じます。この「テクノロジー・アウト」な発想と「マーケット・イン」な発想がお互いに作用していく中で、今後Web3ビジネスの最適解が見つかっていくのではないでしょうか。

僕は最近、「Web3ビジネスマトリックス」という考え方を提唱しています。Web2からWeb3に移行するにあたって、「コンセプト」と「実装」の二つの軸で考えるとわかりやすいのではないかと思っています。

表1:Web3ビジネスマトリックス

表1:Web3ビジネスマトリックス



「コンセプト」と「実装」が両方ともWeb3である「Web3ネイティブ」なビジネス(第4象限)こそ革新的で、それこそが正解だと思いがちですが、Web3がもたらす機会はそれだけではないと思っています。

また、Web3だからこそ、または、Web3でないと実現できない新たな価値とはなんだろうと考えると、それが思いつくか思いつかいないかという”発明”になってしまいます。最終的には、Web3ネイティブにいくとして、直近では、「Web2.5」とも言うべきステップが、直近着実に顕在化すると思っています。

実際は、「コンセプトがWeb2」で「実装がWeb3」なビジネス(第3象限)、例えば電子書籍という既存のビジネスにおいてブロックチェーンを活用することで2次流通の問題を解決することや、「コンセプトがWeb3」で「実装がWeb2」なビジネス(第2象限)、例えば「~to earn」というWeb3的なコンセプトを持ちつつも実装ではブロックチェーンを使っていないゲームやソーシャルメディアなど、すでに顕在化しているマーケットのニーズや古くからある課題を解決していくという分野で、Web3が進展し、マスアダプション(社会のマス層にまで浸透)していくと思っています。
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文=吉川絵美

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