まさに今はその模索期であると考えると、これからWeb3ビジネスを考える企業はサービスやプロダクトのアーキテクチャは、個々のレゴブロックがWeb2でもWeb3でも自由に変更・対応できるような柔軟性や相互運用性をもたせておくことが重要だと思います。
高宮:競争戦略、差別化という視点から考えると、自社の競争優位につながらない部分はレゴとして標準化され、プロトコルなどWeb3の共通レイヤーが吸収していくでしょう。一方で、自社のコアコンピタンス(企業の中核)の部分は、他社に真似できない独自のものとするため、自社でアプリレイヤーで作り込むといった動きにもなると思います。または顧客にとってミッションクリティカルかそうでないかということも判断基準になりますね。
吉川:私達が学んだハーバードビジネススクールの故クレイ・クリステンセン教授の破壊的イノベーション論にもありましたが、破壊的技術は初めはおもちゃのように品質が低いと思われても、時を経て改善がされて、いつのまにかミッションクリティカルな用途に使えるようになっていくものなので、そういった時間軸を想定することも重要ですよね。
高宮:そうそう。90年代にネットでクレジットカード決済をするなんて危険であり得ないと思われていたことが今では当然になったり、昔はSaaS(サービスとしてのソフトウェア)はセキュリティが危ないと思われていたのが、今はむしろオンプレミスより安全ということになってきているわけですから。
これはテクノロジー的にレディかどうかよりも、社会の許容感覚などの社会的背景が大きく影響する部分があるんですよね。だからその時々で、マーケットのニーズに最適なWeb2とWeb3のレゴブロックの組み合わせを考えていくことが重要ですね。
吉川:リップルの国際送金ネットワークでも、暗号資産をブリッジ通貨として使うかどうかの選択肢を顧客に提供しています。
16年頃は金融機関は暗号資産に対して警戒モードだったので暗号資産にはなかなか手をつけにくい状況でしたが、そこから数年かけて規制フレームワークが整備されたり社会的にブロックチェーンが受容されていく中で、金融機関の暗号資産に対する態度は様変わりし、今ではリップルの送金ネットワークの送金量の大部分が暗号資産をブリッジ通貨として使った送金取引になっています。
このことからもマーケットのレディネスに合わせて実装をアジャストできる柔軟なアーキテクチャが重要であると痛感しています。