宇宙

2023.03.12

UFO目撃例の一部は「物理に反する」 米国防総省とハーバード天文学者が論文

米議会の公聴会でUAPの説明をするスコット・ブレイ海軍情報部副部長(Getty Images)

米国防総省とハーバード大学の天文学者2人(うち1人はエイリアンの探査機が太陽系を訪れた可能性があると公言する「ビリーバー」だ)が、共同執筆した論文で、「未確認航空現象(UAP)」の目撃情報を評価するためにはより厳密なアプローチを取る必要があると訴えた。UAPは、かつて「未確認飛行物体(UFO)」や「空飛ぶ円盤」と呼ばれていたものを示す新しい用語。

国防総省全領域異常解決局(AARO)のショーン・カークパトリック局長とハーバード大のアヴィ・ローブは、現在はまだ査読中の論文を公開。その中で、「極めて機動性が高い」物体のように見えたとする複数のUAP目撃例について、物理学に基づきその正体を暴こうとしている。

結論を要約すれば、謎の物体があり得ない方向やスピードで動いていたとされる目撃情報が仮に事実であれば、大気との摩擦によって生じる火の玉が見えたり、レーダーで検出可能な電波信号が発生したりしたはずであり、「そうした痕跡がないことは、距離測定(およびそれに基づいた速度)が不正確であったことを示唆している」とのことだ。

言い換えれば、UAP目撃情報の一部は、目の錯覚や機器の限界で説明できる。実際、米議会で昨年開かれた公聴会では、国防総省の高官が、暗視ゴーグルをカメラのレンズに付けると、ピントの外れたドローンが謎めいた三角形の物体に見えることを示した。

ローブはNBCニュースに対し、「軍関係者からの(UAP目撃情報に関する)報告は興味深く、自分の仕事のモチベーションとなるものですが、私は実際に何が起こっているかを測定結果から知りたいのです」と語った

ローブはハーバード大学で、最近話題になった数百件のUAP目撃情報を、系統的、科学的な手法で評価する「ガリレオ・プロジェクト」を立ち上げた。

ただし、ローブは誤りを暴く「デバンカー」というよりかは、ビリーバーであることはまず間違いない。

2021年の著書『オウムアムアは地球人を見たか? 異星文明との遭遇』でローブは、観測史上初めて太陽系外から飛来した恒星間天体の「オウムアムア」について、地球外生命体から送られてきた宇宙探査機であった可能性が高いと指摘した。

さらに、地球に衝突した隕石の中には、恒星間天体とみられるものもあったと主張している。ガリレオ・プロジェクトは、近い将来その一つを海底から回収することを目指している。

つまるところ、ローブはこう考えている。エイリアンは存在するが、私たちが空で見つける奇妙な物体の大半はエイリアンではない、と。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事