ANAグループは、2020年10月に中距離国際線を担う「第三のブランド」を2022年度の運航を目処にスタートすると発表。当初は中距離LCC(ローコストキャリア)としてアナウンスされていたが、2022年3月に行われた発表会では「AirJapan」というブランド名とともに、LCCではなく各種サービスをカスタマイズして提供することで、価格を抑えながらもFSC(フルサービスキャリア)に近い搭乗体験ができるブランドを目指すとしている。「Fly Thoughtful(気づかいや思いやり、やさしさといった意味)」をコンセプトとし、LCCとFSCの中間に位置するブランドというわけだ。
この戦略で先行しているのがJAL(日本航空)の子会社で、中長距離国際線を提供している「ZIPAIR」。機内でのWi-Fiによるインターネット接続こそ無料なものの、機内食や預け荷物、機内で使用するブランケットやネックピローといったサービスは有料。利用客が自分のニーズに合わせてサービス選択することでコストを抑え、しかもシートピッチはエコノミークラスで31インチ(約79cm)と、LCCで一般的な29インチ(約74cm)よりも足下が広いなど快適性が高いため人気のエアラインとなっている。
今回の発表会では、採用するシートのお披露目が行われたが、このシートの仕様からも多分にZIPAIRへの対抗と対策がなされていると感じられた。たとえばシートピッチは32インチ(約81センチ)とZIPAIRよりも1インチ広くなっている。
今回発表されたAirJapanで採用されるシート。デザインは英国のAcumen、製造は米国のSafran Seatsが担当
ZIPAIRはフルフラットシート採用したビジネスクラスに相当する座席も用意しているが、AirJapanでは全席エコノミークラスに統一することで、座席数を確保しつつシートピッチにも余裕を持たせられるようにしているとのこと。エアージャパン代表取締役社長の峯口秀喜氏は、発表会での質疑応答で「ある程度エコノミークラスの座席のピッチを幅広くすれば、お客様に十分楽しんでいただけ、選んでいただけると思う。フルフラットだとか、もっと広い席を望むお客様もいらっしゃると思いますが、我々としてはエコノミークラス全体のピッチを広くすることによって、より多くのお客様に乗っていただく。これが、我々の戦略です」と話している。
エアージャパン代表取締役社長峯口秀喜氏
ちなみに機材はボーイング787-8型機を予定しており、ANAの同じ機材の場合シートピッチは国際線が34インチ、国内線が31インチなので、AirJapanはその間の広さとなっている。
機材はボーイング787-8型機を使用する