その1年の終わりに笑うことができたのは、銀行の普通預金口座に入れておくだけ、などの保守的な方法を選んでいた人たちだったかもしれない(少なくとも、手持ちの資金が減らなかったという点ではそういえるだろう)。急激な物価の上昇がなければ、大幅に伸びることはなかった口座残高の実質的な伸び率も、もう少し大きくなっていたはずだ。
一方、それなりの資金を持ち、より冒険的になれる投資家たちにとっては、高級品を対象とする、いわゆる「実物資産投資」や「情熱投資」が、資産の目減りを避ける方法になっていた可能性がある。
英不動産コンサルティング会社、ナイト・フランク(Knight Frank)の報告書によると、株やその他の金融商品以外に投資対象とされる高級品の多くは2022年、インフレ率を上回る価値の上昇を見せていた。
投資対象としての高級品のうち、2022年の価値の平均上昇率が米国のインフレ率(6.5%)を超えたのは、以下の商品だ。
・美術品:29%
・自動車:25%
・時計:18%
・ハンドバッグ:15%
・ワイン:10%
・コイン:8%
ハンドバッグ、ワイン、収集向けのコインも、インフレ率を超える価値の上昇をみせていた。投資に充てられる金額がそれほど多くない人たちにとっても、どの商品を購入すべきかについての十分な知識があれば、適した投資対象だったといえるだろう。
ただ、高級品のなかにも、価値の上昇率がインフレ率を下回ったものがある。ジュエリー(6%)、高級家具(4%)などだ。また、カラーダイヤモンド、希少価値の高いウイスキーの価値も、インフレ率ほどには価値は上がらなかった(ただ、これらのウイスキーは昨年、10年前と比べた場合の価値の上昇率が373%となっている)。
それでも、これらの商品の価値の上昇率は、連邦準備制度理事会(FRB)がゼロ金利を解除したにもかかわらず、今年初めの時点で平均0.35%にとどまっていた普通預金の金利は超えている。多くの人に高級品への投資を思いとどまらせているのは、複雑で、もともとリスクが高いというその性質のためだろう。
関心には地域差
ナイト・フランクは、どの地域の富裕層がどの高級品への投資に最も関心を持っているかについても分析を行い、報告書でその結果を明らかにしている。プライベートバンカーとウェルスアドバイザー、仲介業者、ファミリーオフィスの経営者など合わせて約500人を対象に行った調査によると、欧米では高級品のうち、美術品の人気が最も高かった。
一方、アジアでは美術品と時計が同率1位。ワインが2位だった。アフリカでは、最も人気の投資対象はクラシックカー、2位はジュエリーとなっている。
(forbes.com 原文)